
(講義の様子。研修生の質問に答える中田氏。)
2026年6月10日、石川県立九谷焼技術研修所は、重要無形文化財「釉下彩」保持者(以下、人間国宝)に認定された中田一於氏を講師に迎え、九谷焼の技術を学ぶ研修生を対象とした特別講義を実施しました。
当研修所は、370年の歴史を誇る九谷焼の伝統技術を守りながら、次代にふさわしい新たな九谷焼に挑む人材を育成する専門機関です。本講義は、人間国宝認定を記念して開催されたもので、九谷焼の未来を担う研修生へ、制作への思いや作家人生の歩みについて語っていただきました。

(講義の様子。制作工程についての紹介。)
講義では、小松市立本陣記念美術館で開催された特別展「銀と彩-人間国宝《釉下彩》-中田一於の世界」の出品作品を中心に、スライドで紹介しながら、それぞれの作品に込めた思いや制作背景について解説いただきました。
作品が完成するまでの試行錯誤や表現を追求する過程、そして長年にわたり技術を磨き続けてきた中での苦労や挑戦について語られ、研修生たちは中田氏の話に真剣に耳を傾けていました。人間国宝として第一線で活躍する作家ならではの視点から、九谷焼の可能性や未来についてお話ししていただきました。

(中田氏が制作で使う仕事道具の数々。実際に手に取ってみる研修生。)
今回の特別講義は、次世代の人材育成と技術継承を目的として実施されました。
講義の中では、これから九谷焼産業を支えていく若い世代に向けて、技術だけでなく、自分自身の表現を大切にしてほしい、という思いが語られました。また釉裏銀彩の技法についても「この技法をやりたい人がいるなら教えていきたいと思っている。表現は自分と同じものではなく、この技法に自分独自のものをプラスしてくれればと思う。」と技術継承への意欲も語られました。
研修生たちにとって、九谷焼の第一線の作家の経験や価値観に直接触れる貴重な機会となりました。

(中田氏による作品解説。作品ごとの制作時エピソードも語られました。)
講義後の質疑応答では、研修生から数多くの質問が寄せられました。
「釉裏銀彩の仕事を続けようと思ったのはなぜですか。」
「この技法を続けて10年くらい経った時、三代徳田八十吉さんに励ましの言葉をもらったことがあって、それ以来、この仕事では一番でいたいという思いで続けてきた。続ける中で、色であれ模様であれ、変化を付けながら今も追求し続けています。」
「作品に用いる文様はどのように発想しているのですか?」
「箔の性質上、あまり大きなパーツは難しいことと、先代の今右衛門先生から、「吉田美統さんは具象だから、中田さんは具象じゃない方がいいよ」とアドバイスをもらいました。モチーフは抽象化して文様にしています。私は焼き物屋で、絵描きではないから、絵描きに絵は任せて、文様にすることで焼き物の「絵」になるんじゃないかと思います。」
作品づくりに対する考え方や技術習得の過程、制作を続ける上で大切にしていることなど、多岐にわたる質問が挙がりました。参加した研修生からは、「第一線で活躍する作家の考え方に触れることができた」「続けることの大切さを知り、これからの制作活動への大きな励みになった」といった声が聞かれました。

作品に対する研修生の質問に答える中田氏
今回の特別講義は、人間国宝認定という大きな節目を迎えた中田氏から、未来の九谷焼を担う若手へ直接思いが伝えられる貴重な機会となりました。
中田氏は、九谷焼を学ぶ研修生へのメッセージとして「今は研修所の中で色んな先生に習っていますね。その中で自分に合う技法に、自分独自のものを加えたら、自分のものになっていきます。九谷焼はたくさんの加飾技法があるので、各々が自分なりの九谷焼をしていったらいい。まずは基礎をしっかり学んで、それから自分の九谷焼を目指してもらえればよいなと思います。」と研修生にエールを送っていただきました。
中田氏の長年にわたり培われてきた技術や精神、そしてものづくりへの情熱は、研修生たちにとって大きな学びとなり、今後の制作活動への励みとなりました。
研修所では今後も、地域の伝統産業を支える人材育成に取り組み、九谷焼文化の継承と発展に貢献してまいります。
【お問い合わせ・取材申込】
石川県立九谷焼技術研修所
所在地:石川県能美市泉台町南2番地
TEL:0761-57-3340 MAIL:kutanike@pref.ishikawa.lg.jp
公式HP:
https://www.pref.ishikawa.jp/kutanike/
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