新内(しんない)流し「お絹」の公演が10月2日、「徳田秋聲(しゅうせい)記念館」(金沢市東山1)で行われた。
同館は明治~昭和の時代に活動した小説家・徳田秋聲が、幼少期を過ごした地域にあり、浅野川沿いでひがし茶屋街にも隣接する。同公演は開館した翌年に始まり、今年で21回目。「金沢ナイトミュージアム2026」にも参加しているプログラム。
新内とは浄瑠璃の流派の一つで、三味線にのせて「太夫」と呼ばれる語り手が節をつけて物語を語る伝統芸能。男女の恋愛を描く人情劇は江戸の吉原などで流行し、二人連れで歩きながら演奏された「新内流し」は花街の名物となった。当日は太夫を岡本紋弥さんが、三味線を杉浦千弥さんが演じた。2人は同プログラムに初回から参加し、毎年題目を変えて演じているという。
日没後の18時30分、同館前の浅野川に架かる梅ノ橋を、演者2人が三味線を演奏しながらゆっくりと「流し」て渡るところから始まった。人影も少なく静まり返った夕闇の中、三味線と草履の音が響き渡った。
会場には20人ほどの観客が集まった。中には着物を着た女性や外国人の姿も。演目は2人のオリジナルの作品「お絹」で、原作は徳田秋聲が1925(大正14)年に発表した小説「挿話(そうわ)」。金沢に帰省した秋聲が、ひがし茶屋街で茶屋を営む親戚の家に滞在した体験を元に執筆した作品で、岡本さんが小説の登場人物を取り上げて新内として創作した。
岡本さんが演じる登場人物の会話と杉浦さんの三味線の音が情緒を生み出し、秋聲が生きた時代の雰囲気を醸し出していた。
岡本さんは「この公演で20年以上金沢に通っている。金沢は本当に雰囲気が良い所。東京にはもう、こういう場所がほとんど残っていない」と話す。
3日17時からは、犀川沿いにある室生犀星記念館(千日町)でも同演目の公演が行われた。