「建物そのものを楽しんで」-金沢21世紀美術館・空っぽの展示室でコンサート

取り囲むように座った聴衆を前に、木琴と鉄琴を演奏する奏者

取り囲むように座った聴衆を前に、木琴と鉄琴を演奏する奏者

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 金沢21世紀美術館(金沢市広坂1)で9月5日、来館者に同館の建築そのものの素晴らしさを実感してもらうための無料コンサート「建築と音のアンサンブル」が開催された。同館の設計者である妹島和世さんと西沢立衛さんが「建築界のノーベル賞」といわれる米「プリツカー賞」を受賞したことを記念した特別イベント。

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 このコンサートは、展覧会の作品入れ替えのため空っぽになった14の展示室で、弦楽四重奏やバイオリンの二重奏、チェロのソロ演奏、合唱などを披露するという形で行われた。四方を白壁で囲み、天井に明かり取りの窓を備えた展示室は、約50平方メートルのものから約320平方メートルのものまでさまざま。オーケストラ・アンサンブル金沢のメンバー38人と井上道義音楽監督、作曲家でピアニストの金澤攝(おさむ)さん、OEKエンジェル・コーラスが各室の広さに合わせた編成を組んだ。

 小展示室の1室では、アメリカ出身のトロイ・グーギンズさんとオーストラリア出身のヴォーン・ヒューズさんがバイオリン二重奏で、レクレールの「ソナタ第3番」などを奏でた。「響きをどう使えば面白いかを考えた」という2人は、楽章ごとに立ち位置と体の向きを変える実験的な試みに挑戦。部屋の中央に向かい合って立ち、さながら格闘技のように、互いに気迫あふれる演奏を行い、室内を強い響きで満たしたかと思えば、聴衆に背中を見せて壁際に立ち、音の反射を利用して雰囲気を一変させた。

面積270平方メートルで、天井までの高さが12メートルと高い大展示室では、日ごろは愛らしいOEKエンジェル・コーラスの子どもたちの歌声が反響によって荘厳に聞こえ、聴衆を驚かせた。約320平方メートルの部屋では、柔らかな木琴の音色と涼しげな鉄琴のハーモニーが床に座った聴衆の間に染みわたった。光庭内に設置されたガラス張りの展示室では、井上さんがキーボードを使って作曲する様子をパフォーマンスとして披露した。

 コンサートに先立ち、受賞を祝う式典と、妹島さんと西沢さんによる記念講演「建築と環境について-近作を中心に」が行われた。

式典では、山出保金沢市長が「この建物はコンペ方式で設計者を選んだので、たまたまお2人に巡り合うことができた。日本の市長の中で一番幸運な市長は、このわたしかもしれない」とあいさつし、2人に記念品を贈った。妹島さんは「公園のように皆が集まれる場所を作りたいと、ずっと思っていた。手掛けた仕事の中で最も有名なのが金沢21世紀美術館で、プリツカー賞受賞はここでの仕事から始まった」と喜びを語った。西沢さんも「ここは建築をさらに考えていく源泉にもなっている」と述べ、感謝の気持ちを表した。秋元雄史同美術館長は祝いの言葉を贈り、来館者が井上さんの発声で乾杯した。

 この日、普段の日曜をはるかに上回る約1万3,800人が来館した。

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