金沢美術工芸大学・デザイン科のプロジェクト成果発表が8月3日、石黒ビル(金沢市尾張町1)で行われ、学生が同ビルのリノベーションのアイデアをプレゼンテーションした。
同科のホリスティックデザイン専攻では、建築やインテリアを主軸としながら、プロダクト、グラフィックなどさまざまなデザイン分野を横断して作品を作るプログラムを毎年、3年生を対象に実施している。今回のテーマは金沢市内の古い同ビルをリノベーションして新しい価値をつくる提案で、当日は、学生がパネルと模型を展示。映像を交えたプレゼンテーションも行った。
同ビルは観光客の多い近江町市場とひがし茶屋街の中間に当たる尾張町にあり、大正15(1926)年、石黒薬局本社ビルとして「関西建築界の父」と呼ばれる武田五一の設計で建てられた。ビルが建った当時の周辺は商店や銀行が並ぶ繁華街だったという。1階がコンビニとして使われていた時期もあったが、現在は全体が空きビルとなっていて、活用方法を検討しているという。
学生の一人は、観光客の往来が多い場所であることから1階をガラス張りにして醸造設備を見せるビアホールを提案。屋上のビアガーデンで使う椅子や地ビールのブランディングなどのデザインも制作した。
雨の多い金沢ならではの案を考えたという学生は、使わなくなったビニール傘をアクセサリーやファッショングッズにアップサイクルする拠点と店舗を提案。リサイクル工程を見せるオープンファクトリーにして環境意識を啓発したり、ファッションブランドのロゴをデザインしたりするアイデアを披露した。
薬局として市民の健康を支えてきた同ビルの歴史を踏まえ、砂風呂によるデトックス施設や、カフェバーを併設した銭湯などを提案する学生もいた。
プレゼンテーションを聞いた同ビルオーナーの石黒亘さんは「考えつかないようなアイデアばかり。夢を感じてうれしかった」と話す。