棟岳寺(金沢市石引)で11月2日、「オランダ祭り」が開催され、地元関係者ら約30人が参加した。 主催は石川県オランダ協会。当日は、オランダでの居住経験のある企業の元駐在員が「オランダ生活で感じたこと」をテーマに日本文化との違いを講演し、その後のミニコンサートではルーマニアで活躍していたバイオリンとチェロの夫婦デュオが演奏会を行った。
現在、県内には在住オランダ人こそいないものの、オランダの関わりは古い歴史を持つ。加賀藩時代のオランダ医学の先駆者だった吉田長淑が祭られている同寺では、有田住職が蘭学顕彰法要を始めたのをきっかけに同協会が発足。オランダ総領事館や石川県のバックアップのもと長年の活動を続けてきた。毎年の夏には、オランダ総領事館が後援し在日オランダ人の子どもらが石川の文化に触れ合う交流の場を設けるほか、秋には同寺でオランダ文化に対する理解と交流を目的とした「オランダ祭り」を開催している。
「オランダ生活で感じたこと」がテーマの講演会では、元繊維メーカーの技術者として4年間オランダに在住した渡邊博佐さんが登壇。オランダの社会制度や教育、雇用形態から文化にわたるまで幅広い話を展開した。渡邊さんは「オランダの税金は所得の52%、消費税は17%と高いが、社会福祉は充実しており、生活に密着した食料品の消費税は3%に抑える税制になっている。雇用は完全に男女平等で、ワークシェアリング制度が浸透しており、基本的に残業の概念はなく、止むを得ず残業した場合には休暇として振り替えられる。平均した労働時間は年間1,400時間で、週に換算すると34時間。女性の社会参加が盛んな文化から、パートタイムの女性労働者でも役職に就くことは常識。また、ユニークな国の取り組みとして、環境問題と健康面から自転車利用の促進が盛んで、週3日以上、20キロメートルを自転車で通勤する人には所得税の減税もある」と語った。年配の参加者からは、日本の歴史・文化と比べたオランダ文化との違いに驚く声が聞かれた。
講演に続き、バイオリニストの伊田多喜さんとチェロの伊田直樹さん夫妻の室内音楽が披露され、優雅な弦楽の音色が境内に響き渡った。ルーマニアの劇場で演奏活動を続けてきたという伊田さん夫妻は、モーツァルト「フィガロの結婚」から「恋はどんなものかしら」やバッハの組曲など8曲を奏で、荘厳な寺の雰囲気の中でのクラシックの音色に参加者は聴き入った。
同協会の岡部佐武郎会長は「来年は『日本におけるオランダ年』に当たるので、当会でもさまざまなイベントを広げていきたい」と話す。