金沢のしいのき迎賓館(金沢市広坂2)で現在、「石田巳代治と仲間たち展」が開かれ、ニューヨークの風景を手描きした友禅の着物などが来場者の目を引いている。
石田巳代治さん(71)は金沢市在住の加賀友禅作家。20年前からは絵画や染額も手掛け、現在、日展会友、水墨画の北水会(本部・金沢市)の会長も務める。
近年、アートと着物の融合を試み、今回は2006年にニューヨークに10日間滞在した際に書き留めたスケッチや水墨画を基に描いた手描き友禅「セントラルパーク」や、立ち並ぶビル群の窓の明かりを表現した手描き加賀友禅「マンハッタンの明かり」などを発表した。
「セントラルパーク」は同展初日の今月18日午前に完成したばかりの最新作。裾にはプラザホテル、背中には樹木の枝、右袖には木々の上に見える高層ビル群を配してある。「マンハッタンの明かり」は黒地で、ピンク色や黄色、白で窓を一つ一つ描いた。ダイナミックな構図で、着物がカンバスのようにも見える。価格は「セントラルパーク」が42万円、「マンハッタンの明かり」が105万円。このほか、スケッチ、染額をプリントした「アート着物」「アート・ドレス」も。
来場者は一般的な加賀友禅とは趣の異なる作品にうっとりと見入り、友人同士で「着てみたいわ」などと話していた。
石田さんは「アートと着物の世界をどこかでドッキングさせたかった。そうすれば、別の新しいものづくりができるのではないかと考えた」と、作品に込めた思いを語る。
別会場では、「平成友禅商店の仲間たち」展も開催され、加賀友禅に関わる職人・作家らのグループ「平成友禅商店」のメンバーが作ったTシャツや財布、友禅の技法を使って絵付けしたテレビボードなど約200点が並ぶ。今年は、友禅染の創始者とされる江戸時代の絵師、宮崎友禅斎が京都から金沢に移住したとされる1712年から数えて、ちょうど300年に当たることから、新分野にも手を広げる友禅業界の今を来場者に知ってもらう狙いという。
開場時間は10時~18時(最終日は17時まで)。入場無料。6月24日まで。