金沢の老舗日本料理店「つば甚」(金沢市寺町5、TEL076-241-2181)の川村浩司料理長(41)がこのほど、フランス・ストラスブールの欧州評議会から招きを受け、加盟各国の外交官夫妻らに加賀料理を披露した。川村料理長は地方の日本料理のおいしさを欧州にアピールするため、海外との文化芸術交流を推進している「国際交流基金」(東京都新宿区)からフランスとスイスに派遣されていた。
ジュネーブの料理教室で行われたワークショップで、参加者に料理を教える川村料理長(3月2日、川村料理長提供)
欧州評議会は47カ国が加盟する国際機関で、日本や米国などがオブザーバーとして参加している。
川村料理長は3月10日、同評議会の庁舎のレストランで各国の外交官夫妻や民間企業の経営者ら約90人を前にデモンストレーションを行った。メニューは治部煮(じぶに)と、金沢の祭りに欠かせない押しずし、えびす、黒蜜ゼリーの4品。治部煮は和紙でふたをして水引を結び、押しずしの皿には稲穂を添えた。ゼリーの上には金箔(きんぱく)をあしらい、目と舌で楽しむ繊細な加賀料理の一端を披露した。
出席者からはため息が漏れ、「良いパフォーマンスだった」「またぜひ来てほしい」と声をかけられたという。
パリとストラスブールの文化会館や調理師学校では、市民ら合わせて約190人を対象に実演と講演を行った。ジュネーブではワークショップを開き、主婦ら30人にえびの蓮(はす)蒸し、治部煮など4品の作り方を伝授。川村料理長は通訳を通じ、包丁の切れ味が舌触りと見た目の美しさの決め手になるとアドバイスした。
川村料理長は「欧州評議会では出席した女性らが『さくらさくら』を歌って歓迎してくれたので、感動して涙が出そうになった。京料理や江戸前のすしが日本料理だと思われがちだが、地方にもおいしい町があるということを十分に伝えられたと思う」と笑顔で振り返った。