ミニシアター「シネモンド」(金沢市香林坊2 KOHRINBO109 4階、TEL 076-220-5007)は10月17日、上映中のイタリア映画「ポー川のひかり」をより深く味わうためのトークイベントを開いた。
同作品は、イタリア・ボローニャ大学の哲学教授がある事件を機に大学から姿を消し、ポー川岸辺の廃屋で近隣住民と心を通わせ、語らいながら過ごす姿を川沿いの風景とともに描く。イエス・キリストを思わせる風ぼうの同教授は住民から「キリストさん」と呼ばれ、作品にはキリスト教にまつわるモチーフやストーリーが散りばめられている。エルマンノ・オルミ監督の2006年作品。
「聖書・キリスト教の基礎知識~映画鑑賞の手引き~」と題したトークイベントでは、宗教学者で元北陸大学教授、現こまつ看護学校長の村上良夫さんが、作品の下敷きになっている聖書やキリスト教圏の文化について、同作品を見終わったばかりの観客に解説した。村上さんは同作品を「福音書の現代版で、さまざまな要素を含んだ内容豊かな映画」とし、それぞれのシーンが表す意味のほか、物や行為によってシンボル化された中身について聖書の一節を引用しながら説明した。さらに、主人公が発する「世界中の本よりも友人と飲むコーヒーのほうがいい」というセリフなどを引き合いに、同監督が作品に込めたメッセージについて語った。
同館支配人の上野克さんは「キリスト教文化圏では常識としてとらえられていることでも、日本人にとってはなじみのないことも多い。キリスト教に限らず、映画やその他の芸術の背景にあるものについての教養を身に付けていると、さまざまな作品をより深く楽しむことができる。今後も機会があれば今回のような講座を開催していきたい」と話す。
同作品の上映は今月30日まで。