特集上映「格差社会を描く~フツーの仕事って何?~」を開催中のシネモンド(金沢市香林坊2 KOHRINBO109 4階、TEL 076-220-5007)に5月17日、ドキュメンタリー映画「フツーの仕事がしたい」の土屋トカチ監督が来館し、舞台あいさつを行った。
同館では、100年に一度とも言われる不況で派遣労働や企業の経営不振などが取りざたされる中、「身近な労働環境や『普通に働く』ということについて考えるきっかけに」と、格差社会で生き抜こうとする労働者を描いた映画を特集上映している。社会における権力の構造を描いたアニメーション映画「動物農場」を5月2日~15日に上映したのに続き、同16日より「フツーの仕事がしたい」と「遭難フリーター」を公開。派遣社員やフリーターは割引料金で鑑賞できる。
「フツーの仕事がしたい」は、セメント輸送運転手として働く36歳の皆倉信和さんが、労働組合のサポートを得て雇用主を相手に闘い、労働者としての権利を獲得していく過程を追った記録映画。1カ月に最長552時間に及ぶ労働、一方的な賃金カットなど過酷な条件に限界を感じ、個人加盟型の労働組合の扉をたたいた皆倉さんは、雇用主や周辺人物から執拗(しつよう)な嫌がらせを受け、心身共に追い込まれながらも理解者に支えられ、人間としての尊厳を取り戻していく。
「皆倉さんほど無茶苦茶な働き方はしていなくても、残業代があまり出ていないとか、有給休暇が取りにくいとかいう悩みを抱えている方、周囲の方がそうだという方も多いと思う。日本には労働基準法や労働組合法があるが、絵に描いた餅のままにしておいては大変なことになる。嫌なことを嫌だと言うことは生きていくうえで大事なこと。一人で抱え込み孤立してしまうのではなく、この映画を機に、周囲の人たちと話し合うだけでもいいから、働く環境や生きる権利について考え直してもらえれば」(土屋監督)。
「遭難フリーター」は、実家を離れ首都圏で派遣社員として働く23歳の岩淵弘樹さんが、通勤の様子や寮での生活ぶり、マスメディアから取材を受けたときの様子、友人との会話などを自ら記録したドキュメンタリー。職場で単純作業を繰り返し、経済的に不安定な生活を送る中で、報道で伝えられる派遣社員像と自分の思いとのギャップなど日々のつぶやきを赤裸々につづり、現代日本に生きる一派遣社員としての本音を浮き彫りにしている。
両作品とも上映は今月29日まで。