室生犀星の最愛の妻「とみ子」の一生から見る家族愛と文学-金沢で企画展

最愛の妻「とみ子ものがたり」

最愛の妻「とみ子ものがたり」

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 室生犀星記念館(金沢市千日町3、TEL 076-245-1108)で現在、室生犀星の生誕120周年を記念した企画展「最愛の妻・とみ子ものがたり」が開催されている。初公開となる写真や遺稿など約70点を展示し、生涯を通じて犀星の最も身近にいた最愛の妻・とみ子の一生をたどる。

とみ子のスクラップブック

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 とみ子は金沢に生まれ育ち、小学校教師として務める傍ら文学を愛する女性として短歌や俳句・随筆を地元の新聞や雑誌に寄せた。俳句欄に投稿していた作品を犀星が見初めたのをきっかけに二人は文通を開始。互いを深く知るようになった1年後、犀川のほとりで結婚を決めたという。

 長男を1歳で亡くした後、1男1女をもうけた。とみ子はおおらかな性格で家庭的、料理好きの食いしん坊。「バームクーヘン風のタマゴ焼き」「フレンチトーストwithハンバーガー」など、食卓にオリジナルの料理を並べ家族を楽しませたという。43歳で脳いっ血に倒れ半身不随となるが、発病後とみ子が娘に「お母様ほど幸せな女はいません。お父様がとても優しい人だから」と語ったように、穏やかで幸せな人生を送ったことがうかがえる。犀星に対する大きな愛情は、とみ子が犀星の作品や細かな新聞記事を集めて作ったスクラップブックにあふれている。

 結婚前の犀星がとみ子に捧げた詩「永久の友」では、とみ子から送られる手紙が「心のすみからすみを温めた」と記し、小説「つくしこひしの歌」(昭和14年)には、とみ子との結婚に至る経緯がつづられている。病に倒れ体への負担から創作活動を禁止されていたとみ子が、犀星に内緒で書いた原稿や不自由な左手で毎日つけていた日記、愛用した着物や犀星から贈られた指輪なども展示する。

 同館・学芸員の嶋田亜砂子さんは「とみ子の人柄を知って犀星の文学に興味を持つ人も多い。資料を集めるうち、改めてとみ子の優秀さを知った。とみ子の晩年は知られているが、若い時の様子を垣間見ることのできる内容となっている」と話す。

 同館では犀星に関する講座として、「とみ子日記を読む」(5月23日)、「『つくしこひしの歌』を読む」(6月13日)を開催する。定員20人。

 開館時間は9時30分~17時。会期中無休。観覧料は、一般=300円、高校生以下=無料、65歳以上=200円。6月24日まで。

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