江戸後期の金沢町人、梅田甚三久(うめだじんさく)が日常の衣食住や年中行事などを書いた「梅田日記」の翻刻(ほんこく)版出版を記念したフォーラムが4月18日、金沢21世紀美術館シアター21(金沢市広坂1)で開催される。
フォーラムを主催するのは、歴史、情報システム、観光情報など、さまざまな分野の専門家が参加する大学横断型の学術プロジェクトグループ「遍(あまね)プロジェクト」。歴史資料の新たな活用に挑戦し、これまでに「梅田日記」のブログ化発信や、日記に記述のある甚三久の足跡を巡るモニター観光ツアーの実施などを手がけてきた。
梅田日記は金沢で唯一現存する江戸期庶民の日記資料で、1970年に当時金沢大学教授だった若林喜三郎さんが翻刻している。同グループでは今回、日記原本から新たに翻刻・編集に取り組み、「梅田日記-ある庶民がみた幕末金沢」(3,150円)として刊行した。
フォーラム当日は、金沢市片町の前田土佐守(とさのかみ)家資料館学芸員の竹松幸香(ゆきこう)さんが、「日記に見る城下町金沢のくらし」 と題して基調講演を行い、江戸後期の加賀藩の武士、儒者、町人などが書いた日記をひもとき、城下町金沢の姿を紹介する。続いて行われるパネルディスカッションでは、出版本の執筆、監修に携わったメンバーがパネリストを務め、梅田日記を通して見えてくる金沢町人の暮らしぶりを語る。
フォーラム終了後は、金沢市片町の日本料理店「笑宿(わらいや)」で、「梅田日記」に登場する庶民の料理を歴史研究者の解説とともに楽しむ懇親会「遍夜(あまねないと)」が行われる。1865(元治2)年3 月16 日に甚三久夫婦が親せき宅で食べたお祝いの料理で、フードコーディネーターのつぐまたかこさんと笑宿の協力を得て「小ふた五種 はべん・蓮こん・麩・平茸・薩摩芋」「蟹 酢醤油」などが再現される。
甚三久は、金沢のまちなかに住み、謡いも嗜(たしな)んでいた典型的な金沢町人だという。同プロジェクト代表を務める北陸先端科学技術大学院大学の堀井洋助教は「藩政期の金沢というと加賀百万石の藩主の暮らしぶりがクローズアップされることが多いが、梅田甚三久は今でいう『サラリーマン』。奥さんと一緒に遊びに出掛けるなどの記述もあり、彼らが暮らしを謳歌(おうか)する姿は、我々が身の丈で共感できるもの」と日記の魅力を語る。
フォーラムの開催時間は14時~16時30分。参加無料。詳細と懇親会の参加申し込みは、遍プロジェクトのホームページで確認できる。