「芥川がやってきた~犀と龍の100年~」と題した朗読ライブシリーズで、音楽などの演出がない「素朗読」が8月2日、金沢文芸館(金沢市尾張町1)で行われた。
同ライブは「金沢ナイトミュージアム2024」として金沢芸術創造財団が主催するアートプログラムの一つ。夏から秋にかけて市内にあるミュージアムの閉館後の時間を使い、音楽、演劇、映画など30以上のイベントを行う。同館は95年前に建てられた石造りの銀行だった建物で、館長によるとイベントを行うサロンのスペースは木製の床や調度品のほか本棚の蔵書もあるので、「素朗読の音響環境に適しているはず」だという。
朗読するのは金沢在住のフリーアナウンサーで、朗読家の戸丸彰子さん。市内3カ所で行う朗読ライブシリーズの全ての企画、構成、脚本、制作を担当する。関東大震災のため金沢に避難していた室生犀星の元を芥川龍之介が訪れてちょうど100年ということを知って企画したという。
当日は女性を中心に県内外から約30人が来場。芥川作品を素朗読した戸丸さんは、登場人物の特徴に合わせて声の質や大きさを変え、話に合わせて抑揚や間の取り方を工夫して、感情豊かに世界感を表現した。「20年以上のキャリアの中で素朗読をイベントで行うのは初めて。実力が試されているような気がする」と戸丸さん。ライブ後には「芥川の作品はあまりに文章が美しく、朗読しながら引き込まれてしまうので、自ら抑えなければならなかった」と話した。
同ライブシリーズでは、今回と同じ演目で音楽、映像、ダンスなどを加えたライブを金沢21世紀美術館 シアター21で8月10日・11日に予定する。戸丸さんは「素朗読との違いを楽しんでほしい」と呼びかける。