金沢の町家が期間限定のアートカフェに-能美の作家が個展

古い町家を生かしたアート空間

古い町家を生かしたアート空間

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 能美市在住のアーティスト彌永秀一(やながしゅういち)さんの個展「空庭 カラニワ」が11月1日より、「寺町の町家」(金沢市寺町3)で開催されており、入口付近から和室内部にまで点在するコケや古材を生かしたさり気ないしつらえが、築80年のたたずまいと調和しながら空間の新たな魅力を引き出している。

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 同展は、「寺町の町家」を拠点に都市・建築・美術を横断した活動を行う若手建築家・キュレーター・アーティストの集団「CAAK(カーク)」が主催する初の展覧会。同集団では、年に2~3回、新しい作家の作品を紹介する機会を設ける予定。

 1978年生まれの彌永さんは広島県出身。金沢美術工芸大学油画専攻を卒業後、生花店勤務を経て、現在は造園の仕事に携わっている。風景、水、植物などをモチーフにインスタレーションや花器などの作品を展開する。

 同所は通りに面した2階建ての建物で、かつて陶磁器店兼住居として使われていた。同展に際し、ベニヤ板や新建材は取り除き、中塗り状態の土壁など元来の自然素材の質感を生かしたほか、別の町家の解体現場から譲られた古材を使うなどして、年月を経た町家との流れが重なり合う空間に導いていった。階段部分を利用したフライヤー用のラックや茶色に塗られたサッシ、ほのかな照明など所々に施されたさり気ない変化も、違和感なく町家の空気感に溶け込んでいる。

 エントランス周辺から自然光が差し込む旧店舗部分を経て奥の和室に至るまで、来場者をいざなうように点在するのは、薄く盛られた土に生えるコケ。床をくぐってつながったコケが断片的に見え隠れし、空間全体が屋外の自然とリンクしている姿を表現しているという。「自分の存在はフィルターのようなもの。自然の営みや流れの中にただ居るだけで、ある物が自分を通り抜けて他の物に変わっていく空的な存在。この空間で、そうしたつながりがあることを何となく体験してもらえれば」と彌永さん。

 その場にたたずみ、時間をかけて体感するのにふさわしい作品であることから、期間中はカフェとして営業する。旧店舗部分や和室に設けられた席で、乳製品や卵を使わず天然素材のみで手作りされた「うづらや」(能美市、TEL 0761-51-2835)の菓子とお茶を楽しみながら、時間の流れとともに空間ごと作品を味わうスタイルをとっている。

 2階の和室では、彌永さんが金沢市民芸術村(大和町1)で雨水と茶道でインスタレーションを試みた2003年の展覧会「虚空(むなぞら)の彩(あいろ)に」をテーマにした、山崎阿弥さん脚本・監督による同名の短編映画を上映し、実際に使用されたステンレス製の茶道具も展示している。

 同展は11月7~9日と14~16日も開催。開場時間は13時~18時30分。会場では「うづらや」の商品も販売する。同展は金沢21世紀美術館が主催する「金沢アートプラットホーム2008」のエクステンション展として開催されている。

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