「能登線」への思い込めた写真集-金沢の写真家が出版、写真展も

朝日の中を走る能登線の列車をとらえた湯浅さんの作品

朝日の中を走る能登線の列車をとらえた湯浅さんの作品

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 金沢市在住の写真家・湯浅啓さんが、2005年3月に廃止されたローカル線「のと鉄道・能登線」と同線を取り巻く人々の表情を収めた写真集「能登線憧景(しょうけい)」を自費出版し、出版に合わせて10月30日よりギャラリートネリコの枝(金沢市池田町三番丁、TEL 076-231-2678)で写真展を開催する。

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 湯浅さんは1968年生まれ。祖父母が国鉄職員、母親が金沢鉄道病院の看護師で、湯浅さんは金沢駅前にあった同病院で生まれ、汽笛を子守の歌と聞いた。幼いころには、線路脇の柵越しに、「青森」「上野」「大阪」など訪れたことのない行き先のプレートをつけて走る列車を眺めながら、「自分の見えないすごい世界が広がっているような気がして、あこがれを抱いた」(湯浅さん)。運転席に向かって手を振ると、運転士が汽笛を鳴らしたり、車掌が手を振ったりして返してくれるという一瞬の交流も列車への思いを募らせたという。そうした環境で育ち、中学生になって自宅にあった一眼レフを列車に向け始めたのを機に、列車を被写体として撮り続けている。

 能登線は、奥能登の穴水駅と蛸島駅の間61キロを結んで走った第三セクターのローカル線で、周辺地域の人々の通学や通勤、外出の足として親しまれた。写真は同線が廃止される1年前から本格的に撮り始め、少ない時でも月に2、3回、多い時には月に7回以上訪れて、穴水駅から蛸島駅までくまなく足を運んだという。山際まで海岸線が迫る独特の地形を走る能登線のあらゆるポイントの光線の具合や列車が走るタイミングを知り尽くし、四季折々や朝夕それぞれに異なる表情を見せる風景の中の車両はもちろん、駅舎や運転士、乗客の表情もとらえた。廃線後も、現在に至るまで度々沿線を訪れ、年月とともに変化してゆく廃線後の風景や、能登線が縁で出会った人々の撮影を続けている。

 ありしころの能登線の写真は、2005年刊行の「能登線日和」(能登印刷出版部刊)に収められたが、今回の写真集は、現役最後の1年と廃線後の写真との2部構成となっており、湯浅さん自身が書いた文章が写真1枚1枚に添えられている。運転士や乗客との家族ぐるみの付き合いを通して得たエピソードからは、能登に生きる人々の日常や人生がにじみ出し、ローカル線ならではの深みや味わいを伝えている。

 「初め能登の風景の中を走る列車に引かれて写真を撮り始めたが、撮影を通してたくさんの人々と出会い、能登の人の素朴な魅力に触れることができ、改めて能登の素晴らしさに気付かされた。今回の写真集も、能登線と能登の人々への思いを込めた作品。写真に添えた文章もじっくり読んでもらえるとうれしい」と湯浅さん。写真集は、龜鳴屋(かめなくや)(大和町3、TEL 076-263-5848)が制作し、表紙カバーにはタイトルが活版印刷された切符サイズの紙に湯浅さん本人が改札鋏(きょう)で縁に刻みを入れたものが貼り付けられるなど、装丁にもこだわりが見られる。 

 開催時間は11時~18時30分(日曜は12時30分~18時30分)。11月4日まで。写真集は会場で販売するほか、龜鳴屋の通信販売でも取り扱う。価格は3,500円。

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