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金沢能楽美術館で怪談・妖怪イベント-京極夏彦さんらが出演

朗読する京極さんと能管を吹く吉野館長

朗読する京極さんと能管を吹く吉野館長

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 金沢能楽美術館で8月10日、イベント「能楽、その怪しく幽(かそ)けき世界~『怪』×『幽』×お化け大学校presents~」が開催され、約130人の聴衆が怪談・妖怪の「スペシャリスト」の対談を通じて、能楽に理解を深めた。「金沢ナイトミュージアム」の一環。

金沢能楽美術館での怪談イベント

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 小説家・京極夏彦さんがコーディネーターを務め、妖怪雑誌「怪」(角川書店)の特別編集顧問、郡司聡さん、怪談雑誌「幽」(メディアファクトリー)の編集長で文芸評論家の東雅夫さんが対談した。

 「怪」は7月30日発売のvol.0039で、「幽」も7月1日発売の8月号でそれぞれ能を特集している。京極さんは「鬼、翁(おきな)、妖怪を考える上で、能は外せない。死人と会話するって、元祖怪談ですね」と共通点を語り、2人が賛同した。

 郡司さんは「能に至るまで、日本人のメンタリティーの中にどのようなものが積み重なってきたか、死人との対話を主眼に読み説いた」と内容を説明し、東さんは「北陸の伝承を中心に、特集を組み立てた。両方を読むと、能のかそけさが分かる」と、聴衆に両雑誌の閲読を勧めた。

 京極さんはこれに先立つ講演「絵画・芸能・妖怪」でも、「日本の幽霊は日本の芸能と同じ歩みをしている」と、両者の関連の深さを強調し、幽霊画の約7割は舞台を描いたものだと説いた。また、幽霊画、妖怪画と共に、能の舞台や狂言面の絵も遺(のこ)した絵師河鍋暁斎(かわなべきょうさい、1831-1889)について、自ら狂言や能を演じたことを紹介し、「自分たちの身体では表現しきれない部分を、表現者として、また観客の視点で(幽霊画、妖怪画として)描かざるをえなかった」と分析した。

 イベントでは、京極さんが直木賞受賞作品「後巷説百物語(のちのこうせつひゃくものがたり)」の中から「風の神」7章・8章を朗読した。重要無形文化財総合指定の森田流笛方、吉野晴夫同館館長は、能管で雰囲気を盛り上げた。聴衆は大望を持ちながらも、殺人に明け暮れるようになった男の話にじっと聞き入り、「京極ワールド」に浸った。

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