輪島塗で有名な輪島市で、市役所が地元に伝わる言葉遊び「輪島段駄羅(わじまだんだら)」を新たな観光資源として発信するユニークな取り組みを始めている。
輪島段駄羅は、江戸中期に輪島塗の行商が江戸で覚えた「もじり」という遊戯化した俳諧を輪島に持ち帰ったのが始まりとされる。俳句や川柳と同じ「五・七・五」の17音の韻律で、特徴は、真ん中の7音を同音異義で2通りつくり、句の前半と後半で全く違う内容にする点。長時間、座って仕事をする漆器職人を中心に発達し、表現がガラッと変わる「転換の妙」を味わえる作品が良いとされる。
おめでたい 乾杯続く/寒波居続く 北の宿
愛してる 私と居てよ/渡しといてよ 請求書
エアロビで 腰締まったよ/子獅子舞ったよ 夏祭り
また、段駄羅には「段駄羅作法」と呼ばれるルールがあり、真ん中の音は7音が原則で、過不足どちらでも句は成立しない。ほかにも、「お」と「を」、「へ」と「え」、「は」と「わ」など、音が一致するものは同じ音と認められ、「きゃ」「しゅ」といった拗音は1音に数えることができる。長音記号の「ー」、撥音の「ん」も1音として使え、消音、濁音、半濁音の使い分けは自由となっている。
輪島市では「独自の文化であり、観光客にもぜひ知ってほしい」(観光課)として、朝市通りから「道の駅 ふらっと訪夢」までの約2キロメートルにわたる通りを「輪島段駄羅通り」とし、建物や街灯にタペストリーや表札といった形で130句を飾っている。来年度、同通りに飾るための作品の一般公募も行っている。
応募方法は、段駄羅印のある輪島市内の宿泊所や商店に備え付けの投稿用紙に作品を記入し、同市観光課まで送付する。締め切りは来年2月末日で、優秀作10点は輪島段駄羅通りに飾られ、自身の句が記された輪島塗の短冊もプレゼントされる。