人気キャラクター「ムーミン」の世界観を加賀蒔絵(まきえ)で表現した万年筆が完成し、3月から4月にかけて東京や大阪で開催されるムーミンの展覧会会場などで販売される。
ムーミンは、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンさんの小説や漫画、絵本などに登場するキャラクター。日本でも、小説や漫画、絵本の日本語版が発売されているほか、アニメ化もされ、企業のイメージキャラクターとして起用されるなど、高い人気を誇る。
ムーミンの蒔絵を施したのは、「漆工芸大下香仙工房」(加賀市二子塚町)の大下香征さん。香征さんは、現代のライフスタイルに蒔絵や漆絵を提案する「KOUkoubou」ブランドを2002年に設立し、加賀蒔絵を生かした「色括(くく)り蒔絵」仕立でポップな動物たちを表現した「アニマル・ペン」シリーズなどを手がけており、同シリーズが関係者の目に留まったのが縁となり、ムーミンの加賀蒔絵万年筆の製作が実現した。
同商品は、ヤンソンさんの原画をもとにボディー部分にムーミンハウスとムーミン、キャップ部分には鳥と雲を配したデザインで、著作権表記に至るまで1本1本手描きで製作している。仕立てのデザインは香征さんによるもので、ムーミンハウスと雲は色漆の周りを金線でくくる技法を取り入れ、ムーミンは金蒔絵で仕上げている。金線を生かした意匠でポップなニュアンスを加え、金蒔絵ならではの盛り上がりと光沢でムーミンのプックリ感を引き出すなど、蒔絵独特の立体感や、色括り蒔絵が醸し出す意匠性を生かしたムーミンワールドを1本の万年筆の中に表現している。
「ムーミンの故郷である北欧は、厳しい気候の中で人間に寄り添った手工業製品が育まれ、手のぬくもりが大切にされてきた地域。北陸も気候が厳しく、手工業に対する理解が深いというところが共通する。そうした環境から生まれたムーミンを愛する皆さんの目にかなうよう、伝統技術を生かし、原画の雰囲気や世界観に忠実に仕上げた。今回、既存のキャラクターを加賀蒔絵で表現する挑戦を行ったことで、伝統工芸の新たな展開が生まれたと思う」(香征さん)。
価格は38,000円。「ムーミンプレミアムコレクションIN GINZA2009」(会場=東京・銀座三越、3月24日~30日)、ヤンソンさんの原画や立体模型を展示する「ムーミン展」(同=大阪・大丸心斎橋店、3月25日~4月5日)の会場で販売する。