「金沢・建築文化会議『建築とまちづくりを考える』」が11月26日、金沢市文化ホール(金沢市高岡町)で行われた。主催は金沢市。
この日は、建築家の石上純也さんが基調講演も行った。会場には約500人が集まり、学生など若い人の姿も目立った。
講演の中で石上さんは、ランドスケープ(風景)と建築を結びつけることを重視している事例として、自身が設計した建築作品を、映像などを使って解説した。
石上さんが初めて設計した神奈川工科大学「KAIT工房」は、305本の細い柱をランダムに立て約2000平方メートルの天井を支えることで壁を一切なくし、「まるで森の中にいるようなランドスケープ」を屋内に表現。建築家が予め意図するのではなく、利用者が目的に応じてフレキシブルに使うことができる空間をつくったという。
「KAIT広場」の天井は、約1センチ厚の鉄板を四方から支えることで、柱がない約4100平方メートルの空間を作り出した。「空のような天井と、大地のような床だけの空間」(石上さん)によって建築の中に新しいランドスケープをつくったという。
中国に建設したWater Museum(ウオーター・ミュージアム)は、湖の中に橋のような形で1キロの長さの建物をつくった。建物の中には湖の水を引き込み、来館者には水際を散策するような感覚で1キロを歩いてもらうという。「ここでは建物の中に外部環境と連動したランドスケープを作った」と石上さん。
基調講演の後は、谷口吉郎・吉生記念金沢建築館館長の水野一郎さんと石上さんが対談した。石上さんの設計した建築を見てきたという水野さんは「未体験ゾーンに感じた」と話す。水野さんから、どのようにアイデアを実現するのかを問われた石上さんは「構造や工法など関係する専門家とのコミュニケーションが重要。クライアントとの対話も重視している」と話す。