増える町家の空き家を貸家に転用-金沢らしい景観保全へ市が新事業

時代の面影を残しながら、改修によって装いが一新した町家

時代の面影を残しながら、改修によって装いが一新した町家

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 金沢らしい景観に不可欠な町家を保存、継承していくため、金沢市はこのほど、従来、建物所有者に限っていた町家改修の補助対象を不動産業者などの事業者、賃借人に拡充した「金澤町家賃貸借モデル事業」をスタートさせた。

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 金澤町家は1950年以前に建てられた一般民家で、藩政期の町人や武士の住宅様式をとどめるものを指す。同市が2008年度に実施した調査によると、金沢城周辺の都心部と古い町並みが残る金石・大野地区で約6,700棟あり、そのうち600棟以上が空き家となっている。

 町家は毎年、200~300棟が姿を消しており、このままでは金沢の歴史都市としての魅力が失われる恐れがあることから、市では今年4月、建物所有者を対象とした「町家再生活用支援制度」を新設。外観の修復や柱・梁(はり)・基礎といった主要構造物の修繕や補強、内装改修などに補助金を交付している。

 同制度開始から4カ月間で相談件数は約70件に上るものの、「貸家にするために利用したい」という相談は約10件にとどまっているのが現状。仮に、貸家として改修しても借り手を確保できる保証がなく、所有者が二の足を踏む傾向にあるためで、「これでは空き家の利用が進まず、取り壊される町家も減らない。貸家への転用を加速させるには、不動産業者などの事業者、賃借人にも枠を広げた方がよいのでは」として、8月4日から同モデル事業を募集することにした。

 賃貸借モデルには2つの方式があり、建物所有者と不動産業者などの事業者が賃貸借契約を結び町家を借り受けた上で、不動産業者と実際の借り手である賃借人が賃貸借契約を交わすもので、改修を行うのは建物所有者、不動産業者などの事業者、賃借人のいずれでもよい。後者は賃借人からの改修提案方式で、賃借人は建物所有者と直接、契約を結ぶか、不動産業者の仲介・あっせんにより賃貸借契約を結び、賃借人が主体となって市に改修提案を行う。

 建物所有者にとっては、前者の場合、不動産業者などの事業者から家賃保証がされているため、安心して町家を貸し出すことができる。後者でも、賃借人が改修費を負担するため、貸し出しやすいというメリットがある。

 補助の対象となるのは、住宅のほか店舗・工房・ギャラリー・事務所などに改修される貸家で、補助率は補助対象合計額の50%、限度額は600万円となっている。

 同市町家保全活用室は「このまま空き町家が使われない状況が続けば、その先には取り壊される運命しか待っていない。活用されることによって1軒でも多くの町家を残していきたい」と意気込む。

 事業提案の参加申し込み期限は9月10日。問い合わせは同室(TEL 076-220-2311)まで。

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