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エリア特集2012-06-04

金沢の心の世界と「板キリコ」-熱いお盆の熱い思い

 金沢独特のお盆の墓参りの風習として知られる「キリコ」。金沢では近年、古くからある「箱キリコ」に加えてコンパクトな「板キリコ」が登場し、先祖の墓前にささげられている。

 地元産の木材を使った板キリコを提案する中本製箸では先祖供養の新しい「かたち」を提案するとともに、変わらない「こころ」のありようを問いかけている。

■ 金沢のお盆の風物詩「キリコ」

金沢市とその周辺では、お盆に墓参りをするときに「キリコ」と呼ばれる木と紙でできた箱のようなものを持参し、中にろうそくを立てて墓の前につるす風習がある。先祖の迎え火を保護するために使われるようになったともいわれるが、キリコの由来に明確な説はない。キリコの表面には持参した人の名前を記入する部分があり、誰が墓参りに来たのかが分かるようになっている。

墓前にキリコが揺れる風景は金沢ならではの夏の風景。最近はその風景が少し変わった。従来の箱キリコに交じってコンパクトな板状のキリコが墓前につるされるようになったのである。中本製箸が提案する「板キリコ」だ。

■ キリコ廃止に「待った」

数年前、キリコは廃止の危機に直面していた。

キリコもお盆を過ぎれば、廃棄物として処分をしなければならない。法改正で野焼きができなくなった上、旧来型の箱キリコはくぎを分別するために廃棄にコストがかかる。やむをえず「キリコ禁止令」を出した寺院もある。

「このままでは金沢ならではのキリコの風習が廃れててしまう」と、2002年にくぎを使わない板キリコを開発したのが中本製箸の中本実会長。

同社は年間2億膳の割り箸を同市の工場で製造する割り箸メーカー。近年は長さが足りない、節が多いなどの理由で建材にならない国産スギ材の使用を進めるとともに、製造工程で出る端材はボイラーで燃やして乾燥工程の熱源に利用するなどの取り組みで、業界でも注目を集めている。

板キリコの材料は地元の間伐材だ。割り箸製造で培った独自の技術で木材を効率よくスライスし、紙を貼るなどの仕上げの作業は市内の福祉施設などに依頼している。使用後に寺院が送り返してくれれば自社のボイラー燃料としてリサイクルする。

お盆の選択肢の一つとして確立している板キリコだが、中本会長によれば賛否両論あり、「コンパクトで持ち運びやすい」「雨に強い」など支持する声がある反面、「灯明が上げられない」「昔ながらのやり方は変えられない」という意見も聞かれる。

「キリコを見れば『誰それが墓参に来てくれた』と分かり、温かい気持ちになる。どんな形であれ、キリコは人と人のつながりを実感できる金沢の良き風習」(中本会長)。

板キリコに込める思いはもう一つある。地元の間伐材を使うことで森林の保全につなげたいということだ。「近年水害が増えているのは山が荒れているから。間伐材をお金に変えることができれば、地域の森を守ることができる」と中本会長。地元産材の利活用は市も推進しており、追い風も感じている。

■ 供養の「かたち」と「こころ」を問う

そもそも板キリコは金沢独自の墓参りの風習が失われないようにと開発したものであり、箱キリコとのシェア争いが目的ではない。しかし、数年前から中国産の板キリコが市場に出回るようになり、中本会長の意識も変わった。

「どんなキリコを選ぶのかはお参りする人の自由ですが、心の世界まで外国産でいいのでしょうか」(中本会長)。

同社では今年、金沢市の間伐材を用いた板キリコに「金沢市産使用」の文字を入れた。これまで「お盆商戦」の黒子に徹してきたが、板キリコをPRするポスターを独自に制作し、販売店の店頭に貼ってもらう。

金沢では例年30万個ほどのキリコが出回るといわれ、7月15日の新盆に合わせて市内の花屋やスーパーの店頭にはキリコが山と積まれる。

中本会長は「地元の間伐材を使うことは森を育ててくれた先祖の供養にもなるはず」と、熱い夏に熱い思いを寄せる。

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