
提供:宗重商店 制作:金沢経済新聞編集部
能登半島地震から1年以上がたち、被災地では復興に向けてさまざまな事業が進行中だ。中でも全半壊した建物の公費解体は、件数の多さや利権の複雑さなど困難を極めながらも、10月末の完了を目指して急ピッチで進められている。そのプロジェクトの中核を担っており、金沢に本社がある宗重商店社長の宗守重泰さんに話を伺った。
本社は住宅地の一画にあり、解体事業のいかついイメージとは異なって住宅のような外観だった。靴を脱いで入る事務所は、まるで大きなリビングルームのようで明るい。女性社員も多く、アットホームな雰囲気だ。社長室もガラス張りで、扉は開かれたままのフレンドリーな印象だった。
取材に応える宗守重泰さん
宗守さんによると、会社が創立されたのは86年前の戦前で、建築材料が大量生産される以前の資材が乏しい時代。古い学校などの建築を丁寧に解体して古材を取り出し、再利用のために販売する事業が始まりだったという。現在は建物の解体事業のほか、リサイクル・リユース事業、幼児教育事業、不動産事業など、10の事業を展開している。
能登半島地震では、発災翌日に石川県から公費解体の相談があったという。公費解体とは被災して全半壊判定された建物を、申請に基づいて市町が所有者に代わって解体・撤去する制度。同社は能登の穴水町を担当し、全国の協力会社からの派遣を含めて約400人が解体作業に当たっている。現場の状況を、スマートフォンを使って共有するシステムを震災前から導入していたため、さまざまな地域から応援に来た作業員からの現場状況や作業進捗(しんちょく)などの確認がスムーズにできているという。
能登の解体現場
震災後しばらくの間は道路事情も悪く、電気や水道も通じていない状況の被災地が多かったので、作業員を送り込むのに困難が伴ったと振り返る宗守さん。まずは作業者の環境整備が必要だと感じ、約240人が宿泊できる仮設宿舎を建てた。一度に80人が入れるシャワー室や食堂なども整備し、提供する食事は現地飲食店やスーパーに協力してもらい、食堂スタッフも被災者を中心に現地雇用したという。
能登に建てた仮設宿舎
解体に当たっては、申請者、行政が委託した補償コンサルタント、解体事業者による「三者立ち会い」を実施し、解体する建物の確認や解体方法、公費解体で壊す範囲や家屋内に残置された家財の扱いなどについて話し合う必要がある。宗守さんによると、「通常の解体とは全く違い、特別な配慮が必要。現地立ち会いは必ず3回行い、慎重に確認しながら進めている」という。家主の要望を聞いて、全壊した建物から思い出の品などを無償でレスキューすることも多く、「自分たちは解体が得意なサービス業だと思っている」とも。
能登で行われる三者立ち会い
「空き地が増えていく様は一見寂しいように見えるが、地元の人にとっては壊れたものが片付いて復興が進み、次のまちづくりに向けた準備が整っていくように感じていただいている」と宗守さん。能登とのつながりやネットワークもできたので、公費解体が一段落する10月以降も現地の復興に向けて手伝いたいとして、引き続き穴水に拠点を置くことを考えているという。
「Re」を通じて新しい街と時代をつくることをミッションとしているという同社。Reborn、Reduce、Reuse、Recycleなど、頭文字にReのある事業を推進している。
リユース事業の回収作業
リサイクルについては、解体工事の廃材は同社が運営するリサイクルセンターで分別し、不純物を取り除いて再び資源として再利用するなどにより、廃棄物を減らすSDGsを実践している。
リユース事業も行っている。大学が集中する金沢市では、毎春一人暮らしをしていた学生が卒業し、一斉に3000~4000人が引っ越していくという。その中で多くの新しい家電製品や家具が廃棄されるのを何とかしたいと同社はリユース事業を立ち上げ、春先だけでも500~600件の回収を行い、自社店舗を含む国内外のリユース市場に出しているという。これはまさに、古い建物から古材を取り出すという創業の精神に通じるものがあると感じる。「人の一生を考えると、卒業だけでなく、さまざまなライフステージで『Re』につながる機会があることが分かる」と宗守さん。今後も「Re」の新しい事業の展開を構想していくという。
同社ではモンテッソーリ教育という、子ども自身が成長・発達していこうとする自然な姿を尊重した教育法を実践する幼児教育事業も手がけているが、自ら考えて行動する自主性を育むという点を、社員の教育や組織づくりにも生かしているという。宗守さんは「先輩社員が新入社員に教えると、教えた本人にも学びが生まれるのでベテランの教育にも役立つ」と話し、グループをまたいだ異動や専門領域の異なる業務への挑戦など、社員には興味を持った分野へはフレキシブルに異動してもらい、学びや気づきの機会にしてもらっているという。
取材に応える宗守重泰さん
解体事業の話を聞きに伺った宗重商店。取材を通して、確かに解体事業は同社の事業の中心ではあるものの、それだけにはとどまらず、「まちづくり」の一翼を担い、そこに住む「人」を中心にしたサービスを提供している会社だと感じた。そして会社の事業に携わる全ての「人」を丁寧に見ている経営であることにも共感を覚えた。同社の今後の事業展開にも注視していきたい。