ミュージシャンのCoccoさんを追ったドキュメンタリー映画「大丈夫であるように-Coccoの終らない旅-」の是枝裕和監督が2月7日、シネモンド(金沢市香林坊2 KOHRINBO109 4階、TEL 076-220-5007)での公開に合わせ、同館で舞台あいさつを行った。
当日、館内は是枝監督とCoccoさんのファンで満席に。是枝監督とCoccoさんはプロモーションビデオの撮影を通じて交流があり、「誰も知らない」(2004年)をロンドンで見たCoccoさんが作品に出ている子どもに向けて曲を作り、自宅で録音したCDを是枝監督に贈ったというエピソードも。Coccoさんが故郷・沖縄の米軍基地建設予定地の海に現れたジュゴンについて語り、歌う映像に是枝監督が感動したのが今回の作品制作の直接のきっかけとなり、「CDのお返しができれば」と思ってライブツアーに同行し始めたという。
是枝監督は、自ら新幹線のチケットや宿泊先を手配してツアーに同行したと明かし、「自主制作だった。楽しかった」と約2カ月の撮影期間を振り返った。「ツアーで訪れた先で、生まれた曲が初めて歌われる瞬間など、稀有(けう)な瞬間に立ち会うことができ、至福の時間を過ごすことができた」と充実感をにじませた。同作品で是枝監督が舞台あいさつを行ったのは東京と金沢のみ。
同作品は、友を失ったときに生まれた曲をファンの前で初めて歌ったときの様子、青森県に住む女性からもらった手紙で同県にある六ヶ所村の核燃料再処理施設のことを知って訪れたときの思いを涙ながらに話す姿など、移動中の車内での話やステージでのMC、沖縄での日々などを盛り込み、新しく生まれた曲を織り交ぜながらCoccoさんの豊かな表情を映し出している。
「Coccoが神戸や青森で話していることや曲の生まれ方が、一個人のライブツアーというものを超えて広がるべきものだと思い、公開作品にした。彼女はその土地その土地に行って、蓄積されたいろんな記憶だったり感情だったりを自分の体を通して歌という形にして残していく触媒のような存在だと思う。歌は、元々はこういう風に生まれ、こういう風に人の前で歌われて広がっていったものなのではないかというような、何千年も前のことを想起させる。六ヶ所村の問題など、何ひとつ自分と関係ないと言って目をそらすことなく、正面から向かって背負っていく姿は、潔く、すさまじかった。いかに自分が普段見て見ぬふりをして、ないことにして暮らしているかということを改めて突き付けられた。喜怒哀楽がはっきり表情に出るので、被写体としても魅力的だった。Coccoファン以外の人にもぜひ見てほしい」(是枝監督)。
同館での同作品上映は今月20日まで。