金沢能楽美術館(金沢市広坂1、TEL 076-220-2790)は1月2日、年始特別公演として「新春を寿ぐ『加賀万歳』」を開催した。正月を祝う金沢の風物詩で新年を祝おうと約120人が訪れ、ユーモラスな所作に会場には初笑いの声が響いた。
加賀万歳は、加賀藩祖・前田利家の金沢城入城とともに越前(福井県)から伝わったもので、越前府中の領主時代、年賀の祝いに「越前万歳」が参上していたことに由来する。利家が金沢城主となった後も、一行は正月にまず金沢を訪れ万歳を披露した後、各家を巡るようになったと言われている。その後、越前万歳に能楽の舞や謡を取り入れた金沢独自の優雅な加賀万歳が誕生し、金沢の人々を楽しませるようになった。越前万歳が、家の門口で演じる「門付け」であったのに対し、加賀万歳は屋敷の座敷で披露されてきた。縁起がよい加賀万歳は、現在ではさまざまな祝いの席でも演じられ、国の無形文化財のほか金沢市指定民族無形文化財にもなっている。
当日は、加賀万歳保存会の4人が出演、真っ赤な「大黒頭巾」などをまとった演者らが3曲を演じた。演目の初めに演じられるという「式三番叟(しきさんばそう)」は、館の永久と主人の長寿を祝うめでたい言葉が多く盛り込まれている。「町尽くし」は、金沢の旧町名や神社の名前を唄いこみながら町を巡るもので、最も人気のある演目のひとつ。参勤交代の道中を謡い上げた「北国下道中」は、北陸道・中山道を通り江戸に至るまでの道中の名所・名物を軽快にたどる。
同館は三が日、新春企画として入館料を無料(通常300円)にし館内の施設を開放した。