「ドイツ最先端のサスティナブル事業 ベルリン・フンボルトフォーラムの取り組みシンポジュウム」が10月18日、金沢21世紀美術館シアター21(金沢市広坂1)で行われた。
主催者によると、2020年、ベルリンに建てられた文化施設「フンボルトフォーラム」に入るベルリン国立アジア美術館には、金沢在住の建築家と工芸作家が共創して作った茶室「忘機庵-ゆらぎの茶室」が収められているという。サステナブル(持続可能)な建築を達成するには環境だけでなく、経済、社会文化のバランスが重要であるため「古い建築や街並みをうまく生かしている金沢で関係者と情報交換したい」と同フォーラムから打診があったことから、認定NPO法人「趣都金澤」が同シンポジウムを企画した。当日は建築関係者をはじめ、茶室や工芸に関心がある市民など約70人が来場した。
フンボルトフォーラム財団理事のハンスディーター・ヘグナーさんは、施設が建てられたのが第二次世界大戦で破壊されたベルリン王宮跡であることを踏まえ、当時の建築様式をファサードに再現したと説明。忘機庵も戦争で損壊したベルリンのカイザー・ウィルヘルム教会の塔の形にちなんだ八角形のデザインを取り入れていることを評価して採用したという。「失われたものや壊れたものを再現して文化を継承することは、SDGsの観点からもサステナブルな社会を築く上で価値がある」とヘグナーさん。環境面でも美術館の設備や運営などに必要なエネルギー消費量をさまざまな技術を組み合わせて削減しているほか、展示ケースをモジュール化して何度も使えるようにするなどの工夫をしているという。
ドイツ・エコセンターNRW社長のマンフレット・ラウシェンさんは、炭素排出量の多くが建築に由来しているとした上で、一定条件以上の建物に対して環境負荷のアセスメント・シートの提出を義務付けるドイツの認証制度を説明。ラウシェンさんによると、最近では古い建物を「クリエーティブ・リノベーション」するケースが増えており、建設時の炭素排出量低減に大きく貢献しているという。
日本からは、建築が専門の研究者たちが建築の環境負荷についての最新事例を紹介したほか、忘機庵の開発に参加した地元工芸作家や茶道の指導者が登壇して、建築と工芸の関係についての考えを話した。