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金沢・国立工芸館で人間国宝の中川衛さんが講演

加賀象嵌の特徴を説明する中川さん

加賀象嵌の特徴を説明する中川さん

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 人間国宝の中川衛さんが国立工芸館(金沢市出羽町)で「記憶や思い出の中の風景を可視化すること」と題して開いた講演に9月21日、工芸ファン50人ほどが集まった。

講演の様子

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 同館が12月1日まで中川さんの作品11点などを展示する展覧会「心象工芸展」の関連イベント。中川さんは、金沢美大卒業後に家電メーカーのプロダクトデザイナーになったが、27歳で金沢に戻って「加賀象嵌(ぞうがん)」の道へ入り、2004(平成16)年には人間国宝(重要無形文化財「彫金」保持者)に認定された。

 中川さんによると、熊本や京都などで作られている「布目象眼」が、荒らした金属の表面に金属板を貼り付けるのに対し、加賀象嵌は金属の表面に彫った穴に別の金属板を埋め込む。江戸時代に京都から金沢に入ってきた技術が現代まで残されていて、世界的にも希少な工芸だという。埋め込んだ金属をさらに彫って別の金属を埋めていく「重ね象嵌」という手法で豊かな表現を作ることができ、表面を平滑に磨くことで生まれる一体感は独特な表情を持つという。

 キャラメルの空き箱で偶然にできた形や、果物やギョーザのきれいな形など、日々の生活で面白いと感じた形を見つけては造形の参考にしているという中川さん。講演では「象嵌で作る模様は、移動中の車窓から見えた風景や、ホテルから見た町の風景などをスケッチしてデザインしている」と話した。「印象が残らないので写真を使わない。模様を入れすぎて物語を完結してしまわないように気を付けている」とも。

 工芸を学んでいるという若い女性の参加者を、中川さんは「27歳から工芸を始めたが、29年間頑張れば人間国宝になれた」「日本の工芸といえば陶芸くらいしか興味がなかった海外の美術館やコレクターが、最近では彫金などへも関心が広がっているのでチャンスだ」と励ました。

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