金沢21世紀美術館地下の市民ギャラリー(金沢市広坂1)で8月25日、市内在住の造形作家・齋藤久子さんと大場吉美さんの2人展が始まった。
【VRで読む】21美で金沢市内在住の造形作家、集大成の展覧会を夫婦で開催
金沢美大時代から、夫婦それぞれが造形作家として半世紀以上活動してきた集大成の展覧会で、準備に2年間をかけ、ようやく開催となった。舞台芸術にも携わってきた経験から照明にもこだわり、より繊細で立体的に感じられるよう展示に気を配ったという。
大場さんは「日常の人間のさま」をテーマに、孤独感や絶望の中で揺れ動く内面を捉えた3連の300号の大作のほか、日々の暮らしの中で折々に感じたことをドローイング感覚で表現した平面作品など、40点以上を展示する。
斎藤さんは「増殖していく生命体」をイメージした作品制作を20代の頃から続けており、今回は、植物の根や花、葉、種などを使い、変容していく植物の形態をフォルム化した立体作品を展示。自身の老いが「人間の変化」として作品にも影響を与え、新しい表現にもつながっているという。
「花の固まり」と題した作品は、さまざまな植物の花の部分を固めたもので、来場者が手に取って香りや質感を楽しめる。ほかにも、身にまとったり、中に入って「さなぎ」になりきったりできる作品など、五感を通して体験することでアートの楽しみ方を広げることもテーマの一つ。
齋藤さんは「75歳になり体力のあるうちに、自分たちの作家人生を振り返ることのできる大きな展覧会を開きたかった。2人ともアプローチや表現方法は違うが、『人間が生きる』ことを見つめている。これからも作品制作を続け、新しい表現にも挑戦していきたい」と語る。
開催時間は10時~18時(最終日は17時まで)。9月6日まで。