トリノ五輪金メダリストで、現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する荒川静香さんの対談「乗り越える力」が9月12日、金沢市文化ホール(高岡町)で開かれ、市民ら850人がトップアスリートの不屈の精神に触れた。
対談は成人向けに生涯学習の場を提供する同市市民大学講座の一環。講座では毎回、市民に夢を与える著名人を講師に招いている。この日はフリーアナウンサーの徳成奈津子さんが聞き手を務めた。
荒川さんは白のジャケットに黒のズボンを合わせた、さっそうとしたいでたちでステージに登場した。長身でスリムな体形に観客からはため息が漏れたが、対談では、「167センチの身長が大き過ぎて、ジャンプにブレが出る」とプロポーションへの不満を告白。さらに、両腕が曲がっているのがコンプレックスだと明かし、「きれいに見えないので曲げてカバーしている。右と左(の曲がり方)も違うので、毎日、鏡の前で調整している」と陰の努力を語った。
観客は才能にも容姿にも恵まれたように見える元金メダリストの人知れぬ悩みと、諦めない心を知って驚きの声を上げ、感心しきりだった。
荒川さんはまた、自身を「途中でやめられないタイプ」と分析し、「やりきって(結果が)駄目でも、続けることで充実感が得られる。だから私は『やる』という選択をする」と、日頃のものの考え方を説明した。
対談中には、2006年2月のトリノ五輪の映像を見ながら、競技中の気持ちを一つひとつ回想する場面も。後半のステップに差し掛かると、「これまで携わってきた人たちの顔がフラッシュバックして、『ありがとう』と思った。その時にこれが最後だと何となく感じられた」と、競技からの引退を決意した瞬間の思いも語った。