金沢市在住の友禅作家3人と友禅着物店主の4人で構成するグループ「3Gユニット」がこのほど、デジタル印刷の技法により絵画や彫刻作品などを着物の図柄として描く「アートをきものに」と題した試みを始めた。
現代美術の表現者として、日展などでも高い評価を受ける友禅作家で同ユニットメンバーの石田巳代治さんが20年来温めてきたコンセプトは「芸術をまとう」。これまでの手作り(アナログ)表現での経験にデジタル技術を加えることで、新しい表現世界を追求する。
インクジェットを活用しながらも、加賀友禅と同じ染料や生地を使って着物に絵を写すという手法は、アートや写真をそのまま転写やデザイン化することができるうえ、友禅職人が全工程を行うことで、ぼかし・柄の配置・色の深さ・デザインなど微妙な点での調整にも対応する。手描きのものと比べ色落ちや色汚染に対して1.5~2倍の強さを持ちながら、価格を3分の1程度の抑えることもできることから、同ユニットでは、これらの利点を踏まえ新たな着物文化を発信し友禅の業界活性化につなげたい考え。
同ユニットが活動の第1弾として今月、市内で開催した展示会で作品8点を展示し、仮想の試着コーナーも設けた。「1,000人ほどの来場者が訪れ、コンピューターグラフィックによる試着が好評だった」と同ユニット代表の北澤寛司さん。
今後の活動について、北澤さんは「ファッショナブルな『アートきもの』を金沢から発信したい。8月には神戸、10月には県内で展示会を行う予定」と話す。