ユネスコの無形文化遺産に登録されている石川県奥能登の神事「あえのこと」を紹介する写真パネル展が現在、石川県庁19階ロビーで開催されている。
無形文化遺産はユネスコが選定する無形の人類文化で、芸能(民族音楽・ダンス・劇)、祭礼、伝統工芸技術などを対象とし、生活形態や価値観の変化により失われつつある文化を保護することを目的としている。
同展は、「奥能登のあえのこと」が今年9月、県内初のユネスコ無形文化遺産として「代表一覧表」に記載されたことから、県教育委員会事務局文化財課が開催しているもの。1976年に発足した「奥能登のあえのこと保存会」(輪島市)が、古くから伝わる神事を守り続けている。
「奥能登のあえのこと」は、毎年12月に「田の神」を家の中に迎え入れ、2月に田に送り出すという、輪島市、珠洲市、穴水町、能登町で見られる豊作を願った農耕儀礼。同展では、8枚の写真パネルで同神事の様子を紹介する。
収穫後の12月、家の中に迎え入れた「田の神」にいろりで暖を取らせて風呂に入れた後、赤飯・煮物・魚・汁物などの食事を捧げて収穫を感謝。その後、2月まで家の中に滞在した「田の神」を耕作前の2月、再び風呂に入れ食事を捧げて田に送り出し豊作を祈願する。目に見えない「田の神」を、家の主人が中心となり、あたかも実在する客としてもてなすという、稲作に従事してきた日本人らしい農耕儀礼。
同儀礼を紹介するフィルム「奥能登あえのこと『日本の稲作が生んだ民俗文化』」(86分)を、期間中1日3回上映する(平日=10時16分~、12時56分~、15時28分~。土曜・日曜・祝日=10時16分~、12時51分~、15時23分~)。
同課の調査によると、農家の衰退や過疎化、高齢者社会を背景に、現在では同儀礼を継ぐ農家は奥能登の2市2町で85人となり、「田の神」にふるまう料理数など家ごとで違いがあり、最近は儀礼の簡略化も進んでいるという。
開催時間は10時~20時。11月8日まで。