「職手継祭(してつさい)2024 in金沢~伝統文化を未来へ~」が11月8日、香林坊アトリオ(金沢市香林坊1)で行われ、トークイベントにモデルで俳優の冨永愛さんが登壇した。
主催は経済産業省中部経済産業局。当日は会場の30席ほどが全て埋まったほか、冨永さんのセッションでは通路やデッキからの観覧者が100人を超えた。同セッションには石川県牛首紬(つむぎ)生産振興協同組合理事長で織元の西山博之さん、MIZEN社長でディレクターの寺西俊輔さんが加わり、「伝統を次世代のラグジュアリーブランドへ」をテーマに対談した。
冨永さんは、西山さんが制作した牛首紬を使って寺西さんがデザインした洋服を着て登場し、会場からは大きな拍手が起こった。着心地を司会者から聞かれ、「気持ちいい」と答えた。
牛首紬は白山市の旧牛首村の伝統工芸で、西山さんによると糸に「ふし」と呼ばれるかたまりが出るため生糸として出荷できないくず繭で、綿などに加工されることが多い「玉繭」を集めて糸を取り、自家用として作っていた織物が起源。戦後に途絶えかけた技術を残そうと西山家が再興して今に至っているという。着物需要が激減した現代における展開を模索する過程で寺西さんと出会い、洋服という「新しい入り口の扉が開いた」という。
ヨーロッパでデザイナーとして活動していた8年前、生地の見本市で西山さんの牛首紬に出会って日本の手仕事の奥深さに気付いたという寺西さん。帰国後に国内の伝統工芸の産地とコラボするファッション・ブランドを立ち上げた。「洋服はデザイン先行でテキスタイルが従うものが多いが、日本の着物は職人の技術が主役。反物の横幅で洋服を仕立てるのは難しいが、素材の特徴を生かしてデザインしている」という。今後も石川をはじめとして「地域が主役になる流れをつくりたい」と力を込める。
最後に冨永さんは「今後は全国にある伝統工芸の産地を巡って多くの職人や作家に出会い、そこで得たことを伝えていきたい」と話した。
イベントでは、能登半島地震や水害で被害を受けた輪島塗の職人が登壇して現状報告や復興に向けた課題を共有したほか、金沢箔(はく)と加賀友禅の若手職人が自らの作品を紹介したり抱負を話したりするセッションもあった。