建築家ユニット「アトリエ・ワン」が金沢に空き家として残る町家(金沢市横山町5)を改修し、再生、活用するプロジェクトが本格始動し、8月3日・9日・10日の3日間、同プロジェクトのボランティアスタッフらが町家の大掃除を行った。
アトリエ・ワンは、建築家の塚本由晴さんと貝島桃代さんによるユニット。昨年4月から9月まで、「いきいきプロジェクトin金沢」(金沢21世紀美術館主催)を展開し、石川県や福井県で建築を学ぶ学生らとともに金沢市内の町家を調査し、町家ガイドマップを作成するなどした。
今回のプロジェクトは、同館が今秋開催する展覧会「金沢アートプラットホーム2008」の一環。同展は、金沢の「街」を舞台に行うプロジェクト型の展覧会で、美術館ではなく公園や商店街、街中の空き家などを活動の場として国内外のアーティスト約20人が作品を発表する。
同ユニットとスタッフは6月よりプロジェクトの舞台となる町家探しを行い、吹き抜けがあり、構造もしっかりとした今回の町家を選んだ。今後は改修を進め、再生後の町家は、同展の会期中(10月4日~12月7日)、アーティストや若手建築家の共同スタジオ、レジデンスとして使用するほか、レクチャーや展示などを行う交流の場として活用する。内部には金沢在住のアーティストや職人らが制作した工芸品などをしつらえ、金沢らしさを打ち出す。同展終了後も継続的に自主運営する予定で、宿泊者と制作者とのつながりを生み出す「顔の見える旅館」に仕上げていく案が練られている。
清掃活動では、合板はがしや吹き抜け部分の梁(はり)や貫の掃除、物の整理などが行われ、町家が徐々に元の姿を現していった。同館キュレーターの鷲田めるろさんは「掃除をしていると、実際に何十年も使われていた建物の厚みを感じる」と話し、同市内の新竪町商店街や横安江商店街で古い建物が若者に人気のあるショップとして活用されている例を挙げ、「このプロジェクトを通して、兼六園周辺のこの地域も楽しい場所になるんだということを伝えられるようにしたい」と町家の新しい展開に思いを寄せている。
金沢21世紀美術館 金沢アートプラットホーム2008建築家ユニットが金沢の町家を色分け診断したガイドマップ(金沢経済新聞)アトリエ・ワン