金沢市の商業施設「ラブロ片町」(金沢市片町2)が3月16日に閉店し、百貨店「大和」時代を含めて約60年にわたる歴史の幕を閉じた。最終日となったこの日、買い物客らが子ども時代や若き日に訪れた思い出を振り返りながら店内を見て回り、名残を惜しんだ。
同ビルは1957(昭和32)年に「大和」の本店として建てられ、1972(同47)年、10階建ての現在の形になった。同店が香林坊に移転した後の1986(同61)年11月、「ラブロ片町」として再出発し、献血ルームやアートホールも置く複合商業施設として営業を続けてきた。
16日は閉店2時間前の17時から、館内放送で「ホタルの光」が流された。店内には昭和30年代後半の店の様子を再現したジオラマも展示され、買い物客らは「昔は屋上に遊園地があったんだ」などと互いに話しながら、しみじみと見入っていた。地下1階から7階までの全フロアを歩いて写真を撮る人の姿も。
大学生だった1965(昭和40)年~1968(同43)年にアルバイトをしたという同市在住の伊藤正宏さん(67)は「どのフロアもみんな思い出がある。寂しい」と声を詰まらせ、涙を拭った。
閉店間際には、運営する「ディー・アンド・シー」の道上俊次代表らが正面入り口のドア付近に立ち、店を後にする買い物客一人ひとりに「ありがとうございました」と頭を下げた。来店客が全て退館すると、店頭で「今までのご愛顧を感謝します。大和時代も含めて本当に長い間、お世話になりました」とあいさつし、正面入り口の鍵を閉めた。ドアの前には、「営業終了のご案内」と記した立て看板が設置された。
同ビルは今後取り壊され、2016年春、跡地を含む約4660平方メートルの敷地に商業テナントとブライダル施設が入った5階建ての新しい商業施設がオープンする予定。ビルの前には、イベントスペースやバスの待合場所として利用できる3つの広場が整備される。