金沢大学理工研究域宇宙物理学研究室の村上敏夫教授(X線天文学)と米徳大輔助教(同)の研究グループは11月22日までに、宇宙空間を飛行中の人工衛星「イカロス」に搭載した装置で、恒星が寿命を迎えて爆発した際に起きる現象「ガンマ線バースト」を13回にわたって観測した。
「イカロス」から送られてきた観測データを見る村上教授(左)と米徳助教(中央)ら
ガンマ線バーストは太古の宇宙の姿や、宇宙で初めて星が生まれた時期などを知るための手がかりとして国内外の研究者の間で注目されている。グループでは、これまでに分かっていなかったガンマ線バーストのメカニズムを明らかにしようと、測定データを分析している。
ガンマ線バーストとは、質量の大きな恒星が爆発する際、できたブラックホールからジェットが噴出し、ガンマ線が発生する現象をいう。
グループは世界で初めて、ガンマ線バーストの光の振動方向の偏りを調べるための「ガンマ線バースト偏光検出器」を開発。検出器を搭載した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の人工衛星「イカロス」は今年5月21日、鹿児島県の種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられた。
同グループが初めてこの検出器でガンマ線バーストを確認したのは7月7日で、この後、11月22日までに、13回にわたって観測した。このうち、8月26日のバーストでは、通常の宇宙空間にある量の3倍にあたる毎秒3,000カウントの強いガンマ線が測定できたという。光の振動方向の偏りについてはデータを基に分析している。
「イカロスは11月20日時点で、地球から約4,510万キロの地点を飛行中で、12月8日、金星に最接近する予定。金星通過後も、観測は続けられる。米徳助教は「今までに見られていないデータもとれている。まとめて論文として発表したい」と成果に自信をみせる。