キリンビール北陸工場見学施設が閉館-最後の来館者をお見送り

ガラス越しに、従業員のメッセージを掲げた工場内を見る来館者

ガラス越しに、従業員のメッセージを掲げた工場内を見る来館者

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 白山市にあるキリンビール北陸工場の見学施設「キリンビアパーク北陸」が8月31日で閉館し、営業終了時間の17時過ぎには関係者が玄関入り口に並んで最後の来館者を見送った。

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 同工場は石川県と旧松任市が誘致し、1993年5月、日本海側初のビール工場として操業を開始。「一番搾り生ビール」「ラガービール」など6銘柄のビール類を北陸三県と新潟県の一部に向け出荷してきた。ピーク時の1994年には、生産能力の上限に近い年間約10万キロリットルを生産したが、その後、消費者の嗜好(しこう)の多様化や飲酒運転の厳罰化に伴うアルコール離れ、景気低迷などが影響し減少。近年の生産量は約7万キロリットルにとどまっており、キリンホールディングス(東京都中央区)が経営効率化のため閉鎖を決めた。既に8月20日、最後の出荷を終えており、従業員は9月21日付で予定されている他工場への配置転換まで、清掃や書類整理などを行いながら過ごしている。

 ビアパーク北陸は同工場開館とともにオープン。ビールの製造工程を見学し、製品の試飲もできる地域に開かれた施設として、近隣住民や観光客らの人気を集めてきた。昨年の年間入場者数は約5万5,000人で、過去には年間約26万人が訪れた年もあったという。オープンから最終日までの総入場者数は283万959人に上った。

 31日は個人・団体合わせて245人が来場。仕込みやろ過、缶詰めなど、すべての作業が停止し、従業員の姿がなくなった工場内をガラス越しに見学した。各所には、従業員らが記した「北陸の自然の恵みと人々、そして17年間の長きにわたるご愛顧に感謝いたします」「今後ともキリンビール製品をよろしくお願い致します」などのメッセージが掲げられ、来館者たちが別れを惜しんだ。

 営業終了時間の17時過ぎには、浅野秀明工場長らスタッフ約50人が玄関入り口に整列。「ありがとうございました」と頭を下げ、最後の来館者を見送った。続いて、今度は工場従業員約30人が「皆さまどうもありがとうございました」と書いた横断幕を掲げ、ビアパーク北陸での案内業務を担ってきた女性スタッフたちの労をねぎらった。スタッフの中には、感極まって涙ぐむ人の姿も見られた。

 同工場では11月下旬から解体工事が始まり、来年8月ごろには敷地14万7,000平方メートルが緑地を除き更地になる予定。跡地利用についてはまだ決まっていないが、白山市が同社に製造業の企業の誘致を依頼しており、企業から同工場に問い合わせがあるという。

 地域住民とともに、最後の見学に訪れた地元・白山市旭公民館の赤沢与章館長は「住民にとって思い入れが深い工場だった。できればずっと操業してほしかったが…。今日は皆で最後の姿を見たいと思い訪れた」と、名残惜しそうな表情を浮かべた。

 浅野工場長は「280万人の入場者の皆様と取引先の方、従業員の皆さんに支えられてきた」と感謝を込めた。

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