提供:エキスパート・フラップ 制作:金沢経済新聞編集部
大学生は忙しい。夏休みとはいえアルバイトやサークル活動、集中講義や研究論文、学年によってはインターンや就職活動もある。そんな夏休みも、もう終わろうかという9月、金沢市内で就活イベントがあるというので見学させてもらうことにした。
訪問したのはエキスパート・フラップが運営する「就活の窓口・研修の窓口」で、2022年にできたばかりだという。同社の就職活動支援事業の一環で行う今回のイベントは「ジョブハン・プレフェス」と呼び、ジョブハンティング(就職活動)の準備をするためのイベントを意味し、場所や形式を変えながら今年で4回目になる。企業と学生の出会いの場で、両者のための「練習試合のようなプログラムをデザイン」したという。
イベントが行われたのは、普段は企業研修のサービスで使っているスペースで、ガラス張りで明るく、開放的な雰囲気。部屋の前にはソファやカウンターテーブルなどがあり、利用者が休憩をとったり、気軽にコミュニケーションしたりできる工夫を。
この日参加したのは企業側が4社、学生側が7校から26人(2026年春卒業見込み)。同規模のイベントを同月に4回実施し、合計16社と学生のべ71人が参加したという。1日だけという学生もいれば、中には4日間全てに参加するという学生もいるそうだ。
イベント会場の様子
イベントのプログラムは会社説明、グループワーク、座談会の3部で構成される。最初の会社説明では、参加企業が学生全員に対して会社の概要や特徴を説明する。通常の企業説明会にありがちな業務の概要だけでなく、社風や働き方、考え方などを話す担当者が多いようだ。
社長自ら説明した橘建設の橘裕之さんは、昨年に続き2回目の参加。持ち時間の大半を使って、仕事をする上で自分が大切だと考えていることや、社員に求めていることを説明。「仕事内容よりも会社のありようを見てほしいと思って説明の仕方を考えた」と話す。
企業担当者による会社説明
会社説明を聞いた学生は、各自が評価をスマートフォンで入力する。企業側がその場でフィードバックを受け取ることができるところが新しいと感じた。中には手厳しい意見を書く学生もいるそうだが、それも企業にとって貴重な意見となるに違いない。参考までに学生の評価をのぞかせてもらうと、「会社説明で良かった所は?」の質問に対して、「自社について熱く語る姿が好印象。求める人材について具体的な説明があって分かりやすかった」という感想が見られた。「企業の魅力を感じたか? 今後の交流会などに参加したいか?」などの質問も用意されていて、企業は関心を持った学生を知ることもできるという。
学生がスマートフォンで会社説明を評価
引き続き行われるグループワークでは、主催者が出したテーマについて学生がグループに分かれて議論して発表する。答えのない設問なので、どのような視点で考えるか、様々な意見をどう時間的制約の中でまとめていくかが見どころだ。企業担当者は各グループに入って、学生にコメントをする役割を担う。
最後の座談会は、学生と企業担当者が意見交換や質問などを行うフリーディスカッションの時間。企業ごとに各テーブルを回っていく形式なので、全企業が参加する全学生と接することができるのが特徴。企業担当者が社会の先輩という立場でフランクに学生とコミュニケーションを取ることで、学生が会社の雰囲気や仕事のリアリティーを感じることができるようにプログラムされているように感じた。
参加した東振グループ人事担当の船山祐司さんは「他のイベントと比べて学生との距離感が圧倒的に近く、直接コミュニケーションが取れるところが良い」と話す。
学生のグループワークの様子
イベント終了後に公立小松大学・国際文化交流学部3年の馬瀬千陽さんと、エキスパート・フラップ社長の高穂栞さんに話を聞いた。石川県主催の展示会で知り自分で申し込んだという馬瀬さんは、2日間参加して8社とコミュニケーションが取れたという。「自分で企業を調べると情報が偏ってしまうが、このイベントではさまざまな業種と接することができ、視野が広がった」「プロのリアルな声が聞ける機会が学生にはないので貴重」と話し、企業からはさっそく交流会やインターンの誘いを受けているという。
高さんは、「学生とつながりたい企業と、企業を知りたい学生が出会える場は県内には少ない。互いの『発見』につながるようなサービスを提供したい」という。「特に中小企業は人材や採用にかける人員や工数、ノウハウなどの自社リソースが不十分なところが多く、サポートが必要」として、企業の強みを見つけてアピールする「採用ブランディング」のコンサルティングも提供しているという。
(右から)学生の馬瀬さんと社長の高さん
調査※によると、石川県の大学に通う学生は、およそ50%が県内で就職しているそうだ。この数字をさらに高めて、良い人材が地域に根付いてもらうことは地域課題の一つなのかもしれない。そのために住みやすさや環境整備など地域全体の底上げも必要だろうが、何より持続的に成長を続ける魅力的な企業があってこそではないだろうか。※大学生の地域間移動に関するレポート2023(リクルート就職みらい研究所)
高さんは「企業の成長には人材を戦略的に確保して育成することが不可欠」とした上で、「ビジネスの環境も、人材そのものも激しく変化している。特に地方の企業は人材戦略もアップデートしてほしいし、そのためのお手伝いをしている」と話す。
今回の訪問では、エキスパート・フラップが提供するのは単に就活支援に閉じたサービスではなく、「地域活性化としての重要な側面を担う事業」であることを学ぶことができた。今後の同社の事業展開が楽しみだ。