金沢の老舗漆器メーカー「能作」(金沢市広坂、TEL 076-263-8121)はこのほど、加賀蒔絵(まきえ)を施した豪華なゴルフパターを製作した。
金沢漆器は加賀の歴代藩主前田家によりはぐくまれたもので、京都から招いた名工の指導により、貴族文化の優美さに武家文化の力強さが加わった独特の漆工芸として発展、今日に受け継がれている。加賀蒔絵は金沢漆器を彩る伝統的な装飾の技として知られ、室内調度品、茶・華道具などに施されている。
江戸時代(1780年)創業の同社は、伝統を守りながらも世界を視野に入れた漆文化の発信に積極的に取り組んでいる。5年前、東京のスポーツ用品メーカーと開発を始めた同パターは、モナコで開催されたトラベルマーケットやニューヨークの展示会にも出品、好評を得た。同社では「ゴルフ好きの社長などが、ホールインワンの記念品や贈り物として使えるのでは」と期待を寄せる。
パターは長さ83センチメートルのナイキ社製を採用。漆を塗っても滑らないようウレタン素材を使ったグリップ部分には、縁起が良いとされる「昇り龍」の蒔絵を施し、柄の部分にも漆を塗り重ねた。
漆文化の発信について、同社の岡能久社長は「漆の良さを表現する場には多くの可能性がある。万年筆や時計のほか、携帯電話、音響機器の会社とも話があり、スピーカーは漆を施すことで芸術性ばかりでなく音質も良くなる。これらの試みが海外での展開にあたり、技法の例となれば」と話す。
同パターは現在、受注分のみ対応しているが、今後は東京のデパートで扱う計画もあるという。価格は1本100万円。問い合わせは同社まで。