シネモンド(金沢市香林坊2 KOHRINBO109 4階、TEL 076-220-5007)は2月13日、特集上映「兵士は戦場で何を想う」を開始した。パレスチナや占領下の人々に対する行為を振り返る元兵士らの姿を追ったドキュメンタリー映画2本を特集上映する。
「戦場でワルツを」(2008年、イスラエル映画、監督・脚本・製作=アリ・フォルマン)は、1982年のパレスチナ難民大虐殺時に従軍していたイスラエル人監督が、元同僚らの証言をもとに欠落していた虐殺時の記憶をたどる過程をアニメーションで描いた作品。第81回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ日本映画「おくりびと」の対抗馬となった作品で、ほかにも数々の映画賞を受賞して話題を呼んだ。
同館代表の土肥悦子さんは当初、同作品の手法など映画としての価値を高く評価しながらも、内容に対する違和感を覚えて上映をためらったが、その違和感を表す手段として「沈黙を破る」(2009年、日本映画、監督・撮影・編集=土井敏邦)を同時上映することで同館での公開を決めた。さらに、パレスチナ問題に関する視野を広げる機会として、京都大学大学院人間・環境学研究科教授(現代アラブ文学専攻)で同問題に精通する岡真理さんを招き、上映初日にトークイベントを開いた。
「沈黙を破る」はイスラエル軍がパレスチナ人住民にもたらした被害の実態を記録するとともに、占領地で任務に就いた元将兵たちが当時を振り返り、自ら行った加害行為と当時の心境、現在の思いを告白する様子をカメラに収めたドキュメンタリー。家屋や財産、隣人や家族を失いながらも住み慣れた土地で復興を目指すパレスチナ人たちの肉声と、占領する側の人間として感じ、目にしたことを伝えようとするユダヤ人の若者たちの肉声を織り交ぜ、現地の状況を複眼的に伝えている。
トークイベントでは、岡さんが観客の質問に答えるかたちで、「パレスチナ問題は宗教間や民族間の問題ではない」と前置きし、ヨーロッパのユダヤ人がシオニズムの名のもとに入植したというイスラエル建国の経緯やイスラエルの兵役、国際社会の対応などについて解説し、上映中の両作品の特徴を照らし合わせながら、「まずはパレスチナ問題について知ることが大切」と参加者に訴えた。
併せて、「沈黙を破る」の土井監督から同館に寄せられたメッセージも紹介された。「作品にナレーションも音楽もないのは、ジャーナリストの思想と感性が本質にかかわる大切なことだととらえた事象そのものを見てほしいから。脚色する必要はなく、ジャーナリストが選びとった事象が本物ならその事象そのものが人の心を揺り動かすはず。わたしが理想とするドキュメンタリーやルポルタージュは、視聴者や読者を現場へ連れていく作品である」(同監督)。
上映は2月26日まで。上映スケジュールは同館ホームページで確認できる。