金沢市立安江金箔工芸館(金沢市北安江、TEL076-233-1502)で現在、秋季特別展「屏風・衝立~空間をしきる日本の美」が開催されている。
空間を仕切ったり室内装飾として用いられたりする屏風(びょうぶ)や衝立(ついたて)は、現代の日常生活で目にする機会が少なくなったが、冠婚葬祭や式典など特別な場には今でも必要とされる調度品。今回展示する大きな画面に描かれた美しい絵画や装飾は、2枚、4枚、6枚と多くの画面を持つほど金箔が多用されている。
平安時代、宮廷や位の高い貴人の邸宅に欠かせない調度として発展を見せた屏風が、各扇を紙の蝶番(ちょうつがい)でつなぎ、両面に開くことができる現在の形式となったのは室町時代。当時の屏風の大きさは一般的に5尺ほどで、右から左方向へと四季の風景などが描かれた。現在は作風に決まりごとはなく、純粋に絵画画面として用いられている。
同展では、江戸から昭和の時代にかけて制作された15の屏風と衝立を展示し、金箔によって屏風に装飾された絵画の世界を紹介する。
江戸時代に福井藩の絵師だった岩佐勝重が制作した「洛中洛外図屏風」には、京都御所(洛中)と郊外(洛外)の各所旧跡や景観、四季折々の行事、往来する人々の姿などが描かれており、町屋と鴨川を配した大画面に金閣寺、保津川、祇園祭りの長刀鉾や、八坂神社、清水寺などが大迫力で表現されている。「孔雀に松竹牡丹菊図屏風」は、絹本(けんぽん)の画面に花鳥を描いた作品で、植物を縦方向に規則的に配した独特の構図が特徴。軽妙な筆致で描かれた松や竹を背景に、悠然と羽を広げる孔雀の姿が印象的な作品。
併せて開催されている新収蔵作品展には、沢田宗沢の「松竹梅蒔絵盃」や蒔絵が施された万年筆など12点を展示。関連イベントとして、秋の文化週間に「摺箔(すりはく)体験コーナー」(10月31日、11月1日・7日・8日)のほか「箔打ち実演」(11月7日・8日)も予定する。
開館時間は9時30分~17時。会期中無休。入館料は、大人=300円、65歳以上=200円、高校生以下無料。11月29日まで。