全国金賞6連覇、杜氏・坂口さんが醸した名酒「宗玄」-金沢で「楽しむ」会

新酒の説明をする宗玄酒造の栃平さん

新酒の説明をする宗玄酒造の栃平さん

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 酒千庵・水上(金沢市神谷内町、TEL 076-251-0544)は3月20日、旬菜「座・いっく」(武蔵町)で、能登の名酒「宗玄」のベテラン杜氏・坂口幸夫さんが醸した日本酒を味わう「春の宗玄を楽しむ会」を開催した。日本酒愛好家20人が、旬の味覚をふんだんに取り入れた食事とともに、搾りたての新酒など10種を堪能した。

名酒「宗玄」のラインアップ

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 全国の酒蔵に数多くの能登杜氏を輩出する奥能登・珠洲(すず)市にある「宗玄酒造」は、七尾城主を務めた畠山義春の一族が上杉謙信の城攻めに遭い珠洲に逃れて「宗玄」と改姓、1768年に酒蔵を興したという歴史を持つ老舗。以来、地元の水とコメを使いおいしい酒を醸し続けてきた。

 同蔵の酒は、能登地方の濃い味付けの郷土料理に合うよう「濃醇旨(うま)口」を追求し造られてきたため、「芯が強くふっくらとした甘い酒」として一般的に知られていた。最近は地元の料理も「こってり」から「さっぱり」とした味に変化したことから、同蔵の酒も料理に合わせて「甘口」から「のどごしの良い旨口」に変化したという。

 定年退職した杜氏の道高良造さんに代わり、静岡「開運」で有名杜氏・波瀬正吉さんに師事した経験を持つという坂口さんを1997年に迎え、1998年には従来の「明和蔵」に隣接する鉄筋5階建ての「平成蔵」を設けて最新設備を整えた同蔵では、時代の流れに対応しつつも質の高い酒造りを目指し、数十年ぶりに酒の造りを大改革した。

 常日ごろ「若いころは波瀬杜氏からいつも『飯を食っても飲める酒を造れ』と言われていた。今後も残る蔵とは、後口が良くたっぷりと飲んでもらえる酒だ」と話すという坂口さんが、品質を追求するために取り組んだのは「分離生産」。造り慣れた従来の「明和蔵」では普通酒を、高品質化を図る吟醸酒などは冷房設備が完備された新設の「平成蔵」で造るという手法だ。分離生産することで生産量は減りコストもかかるが「品質は上がる」と強い信念を貫き、6年連続で金賞受賞酒を醸してきた。

 同会で提供されたのは、搾りたての新酒5種(純米酒・純米吟醸酒・純米大吟醸酒)、6年ものの大吟醸古酒や、にごり酒、非売品の秘蔵酒など10種。同蔵の営業課長・栃平一弘さんがそれぞれの味わいを解説し、参加者は猪口(ちょこ)を並べて飲み比べながら熱心にメモを取る姿も見られた。昔から同蔵の酒を飲んできたという参加者は「杜氏が変わって造りが変ると味わいも違う。この酒ならいくらでも飲めそう」などと感想を口にした。

 「宗玄を飲む度に、いかに杜氏さんの技量が香味の優劣に作用するかが分かる。天才杜氏・坂口さんの酒をお客さんに正しく伝えて日本酒ファンを増やしていきたい」と主催の水上さんは話す。

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