秋聲文学でたどる「大正・昭和のブックデザイン」展-装丁57点展示

秋聲文学の装丁

秋聲文学の装丁

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 徳田秋聲記念館(金沢市東山1、TEL076-251-4300)で現在、装丁をテーマにした企画展「秋聲の本で辿る『大正・昭和のモダンブックデザイン』」が開催されている。

併設展(現在終了)で展示された秋聲に宛てた文学者たちの年賀状

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 同展は、昨年度開催された「秋聲の本・明治篇-木版口絵と装丁の美」の続編で、金沢3文豪の1人、徳田秋聲が自然主義作家として成功した以降の作品を紹介する。会場では、近代化が進み都市文化が花開いた大正から昭和の時代に、秋聲文学向けに描かれたエディトリアルデザイン57点を展示する。

 一般に自然主義作家の書籍は装丁が貧弱であると言われ、秋聲が「私は本屋任せで、デザインは全く立たぬのでこれまで注文したことがない」(大正2年)と語ったように造本への興味が希薄だった。そのため、話題になることはあまりなかったが、竹久夢二・杉浦非水・広川松五郎・小寺健吉・木村荘八など、その時代の一流の装丁家や画家の控えめで質実なデザインを起用してから、秋聲文学はその内容に相応した独特の美しさを持った。また、秋聲が決まった装丁家を持たなかったことは、そのバリエーションを広げるきっかけにもなったという。

 秋聲の装丁としての主な作品には、公私共に交流を持ち生涯で200以上の装丁も手がけた竹久夢二の「路傍の花」(新潮社、大正8年)や「或売笑婦の話」(日本評論社、大正9年)などがある。棟方志功の「土に癒ゆる」(桜井書店、昭和16年)は、芸術性が高いことでも知られている。

 同館学芸員の大木志門さんは「装丁はアートとして見ることもできるため、秋聲や文学についてよく知らない人、美術系の学生・外国人も多く訪れる。装丁という『目で見て楽しめる芸術』を入り口に秋聲の文学に親しんでもらえれば」と話す。

 開館時間は9時30分~17時。観覧料は、一般=300円、65歳以上=200円、高校生以下=無料。4月12日まで。

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