金沢市民芸術村にある古い農家を移築した「里山の家」で2月15日、同村アート工房が企画する「ガラスで茶碗をつくろう」に参加した市内の小学生生15人が、自作の茶碗を使った茶会を体験した。
現代でも茶道が盛んな金沢で、客においしい茶を飲んでもらう心配りが形になった茶道道具を通じ、ものづくりや茶道の心構えをシリーズで学ぼうとする企画「アート子ども茶会」の一環。
1年間を通して行われたプログラムの1回目は焼き物、2回目は花入れと掛け軸、3回目は蒔絵(まきえ)や茶杓(ちゃしゃく)について学び、4回目はガラスの茶碗づくりに挑戦。型にガラスを詰めて電気炉で溶かし成形する「パート・ド・ヴェール」という技法を使って思い思いのデザインに仕上げた。4回目で作った作品を持ち寄った当日、自ら工夫を凝らした茶碗を使っての「茶会」とあり、参加する子どもたちの顔には達成感が見られた。
市内のガラス作家・渡辺匡人さんや金沢美大生が講師となり進められた制作は、粘土の原型から石膏(せっこう)で型取り、青や黄などカラフルなガラスを詰め込んで仕上げた作品は、ハート型やひし型などユニークな出来栄え。渡部さんは日差しが差し込む古民家で、子どもたちに「光を通してガラスの色を楽しんで」などと語りかけながら、「ガラスの原料は砂、砂漠を旅した人がたき火をした時に砂が溶けてガラスが発見された説もある」とガラスの歴史を紹介した。
市内の和菓子店が、梅が色づくことをイメージして作ったという生菓子「如月(きさらぎ)」とともに、自作の茶碗で茶席を体験し楽しんだ子どもたち。懐紙を手のひらに乗せた上に菓子を置き、切り口を見せないなどの作法にも真剣に聞き入り実践した。
子どもたちは「初めての体験で楽しかった」「ガラスが想像以上の色に仕上がってびっくりした」「茶碗が割れず出来上がり無事お茶会ができて良かった」「思っていたハート型の茶碗に仕上がってうれしい」などの感想を口々にした。
同アート工房の担当ディレクター戸出雅彦さんは「思いが込められた物で、目に見えない気持ちを伝えることができることを学んでほしい」と子どもたちに説明し、「今後は小さな茶室を作って、友だちや家族を呼んだ茶会を通して気持ちを伝えられる場にしたい」と話した。
シリーズ全体では総勢80人の子どもが参加したという。