「能登半島地震からの復興に向けて」と題したセミナーが8月2日、金沢勤労者プラザ(金沢市北安江3)で行われ、自治体や建築関係者が集まって知見を共有した。
主催はコンストラクション・マネージメント協会北信越支部。
当日は約40人が聴講。講師の一人で石川県内の建築設計関連の団体を中心に立ち上げた「能登復興建築人会議」会長で金沢工業大学教授の水野一郎さんは「6月以降、建築士が被災地に赴いて住宅相談会を行い、被災者と建物を見ながら修理方法や費用などの相談に応じ、喜ばれている。現地の声で気付かされることが多く、復興の在り方を考えるいい機会になっている」と話した。能登の場合は農業や漁業、輪島塗など、生活となりわいが同じ場所にある家業が多く住宅だけの話では不十分なので、今後は商工会などと相談しながらなりわい相談も検討する。
続いて登壇した都市再生機構で災害対応支援に当たる河野裕一さんは、東日本大震災の復興事業に関わった経験を「担当した宮城県女川町の場合は津波によって町全体で建物の流失と全壊があったため、土地をかさ上げするなど大規模に造成した上で新しいまちをつくる必要があった。地域住民の声を聞く集会から始めたが、意見を出しづらいという声があり、個別に家を回って意見を聞いた」と話し、「デザイン会議と称し、有識者の提案に対して住民が意見を出し、その場で町長が意思決定していくというスピード感と透明性のある合意形成の方法を取った」とも。能登の復興でも地元の声を聞いて目指すべき姿をつくった上で、実現性と持続性を考えていくことが重要と訴えた。
座談会では「立派な材料を使った古い家屋が次々と解体されている。集落の景観を社会の資産と捉え、公費を活用した対策が打てないだろうか」「能登には家族構成などに変化があると住宅を交換する地域があると聞く。家屋は集落の共有資産という考え方に新たな可能性を感じる」などという意見が出た。