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金沢大学で輪島塗「塗師」講演 能登の工芸と景観に共通の復興課題とは

赤木さんの講演の様子

赤木さんの講演の様子

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 シンポジウム「災害と社会:能登半島地震から考える」が7月31日、金沢大学(金沢市角間町)で行われ、輪島塗の塗師(ぬし)・赤木明登さんが能登の復興課題について講演した。

赤木さんの講演の様子

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 主催は、同大学人間社会研究域附属グローバル文化・社会研究センター。赤木さんの講演タイトルは「工藝(げい)的復興について考える」。

 輪島塗は木地、下地、研物(とぎもの)、上塗、加飾という最低でも5つの作業工程があり、木地を作る木地師だけでも挽物(ひきもの)師、曲物(まげもの)師、刳物(くりもの)師、指物(さしもの)師という4種の専門職人がいるという。赤木さんは「分業による共同作業によって、ひとりではできない物が作れるのが輪島塗の魅力。自分の作品も、木地は木地師の池下満雄さんが長らく製作してきた。何世代にもわたって伝承・洗練されてきた技と70年以上の経験から生まれる『体からしみ出る形』が自分の作品の土台となっている」と話す。

 1月の能登半島地震で赤木さんは大きな被害を免れたが、高齢の池下さんは工房と自宅が倒壊したために加賀市へ避難したという。池下さんの木地が途絶えてしまうことを危惧した赤木さんは、岡山の工務店に頼んで池下さんの工房を元の形に再建することを決め、2月には倒壊した建屋を引き起こし耐震化を加えた工事に着手。周囲はまだ全半壊の建物ばかりの中で3月末に完成した。「輪島市で最初に建て直したのではないか」と赤木さん。5月には池下さんに仕事を再開してもらうことができたという。

 かつて大勢いた木地師が年々減っていく中で起きた今回の地震。産地としての将来を危惧した赤木さんは後継者育成の必要性を感じ、自分の工房から2人の若手を池下さんの弟子にしてもらい、2人は建て直したばかりの工房で修行を始めたが、その矢先の7月1日に池下さんは亡くなってしまった。それでも赤木さんは諦めず、木地屋の会社を設立して持続的な後継者育成を目指すという。

 赤木さんは講演の最後に、輪島塗が受け継いできた分業と師弟制度、その土地に根差した材料、込められた精神性などを「交換不可能なもの」として能登の景観と重ね合わせ、地震によって建て替えられる住宅が、メーカーの合理的な製品ばかりになってしまい、「受け継がれてきた連続性から切断された交換可能なもの」になっていくことに言及した。

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