武蔵が辻のギャラリー「金沢アートグミ」(金沢市青草町、TEL 076-225-7780)で4月23日、8周年記念個展「湯川洋康・中安恵一 利益の石」が始まった。
湯川洋康さんと中安恵一さんは、土地の歴史や習慣を調べ、それらと現代を生きる人との関係性に発想を得て制作を行う彫刻家ユニット。今回は、金沢市出身で「日本の放射化学の父」といわれる化学者・飯盛里安と鳥取県西部の民間信仰「サエノタワ」の石を取り上げ、「石と人との距離」を探る。
放射性鉱物の研究で知られる飯盛だが、晩年は宝石の美しさを追い求めて「人造宝石」を作り続けた。人造宝石を顕微鏡で拡大した写真作品「顕微鏡ごしの宝石」では、シャープな人造宝石の魅力を天然宝石と比較しながら伝える。スクリーンには飯盛の最晩年の日記を映し出し、日常の機微や鉱石に対する思いも紹介する。
サエノタワでは、良縁を得るために、理想の相手の顔に似た石を海辺で拾って山にささげたと伝えられる峠があり、そこには今でも多くの石が残されているという。会場では、峠の風景を背景に実際に鳥取県の海辺で拾った石を並べ、その様子や祈りに満ちた思いを伝える。
同ギャラリーの上田陽子さんは「両者に直接的な関係はないが、『石』という共通点から見えてくるものがあるのではないか。時間や場所を超えて『利益の石』を一緒に探すような気持ちで楽しんでもらえたら」と来場を呼び掛ける。
開催時間は10時~18時。水曜定休。入場無料。7月17日まで。