縦横の大きさがわずか10センチの風景画を並べた「寺田栄次郎展-10cm四方の小宇宙-」が現在、石川県立美術館(金沢市出羽町、TEL 076-231-7580)で開かれている。
「寺田栄次郎展-10cm四方の小宇宙-」作品76点が並べられた会場の様子
寺田さんは金沢美術工芸大学芸術学専攻の教授を務める洋画家。以前は130~200号の大作も手掛けたというが、「自分に合った大きさで描けば大作以上のことができる」と考え10センチ四方にサイズを決め、風景や静物、人物を表しているという。
並べられているのは写実と想像を交えた作品76点。手製の油絵の具などを使い、自分で下処理を施した厚板の上に赤茶けた荒れ地と山やうっそうと茂る樹木、青い海に囲まれた南の島、同大近くの「鶴間坂(つるまざか)」、金沢市小立野周辺で見つけた野花、沖縄の「ガジュマル」をイメージした木を精緻な筆致で表現した。寺田さんは人間の命と死をテーマにしており、見方によって風景の中に白い骸骨が見える作品もある。
同館によると、油彩の風景画は横長の画面が大半で、広大な景色を正方形に切り取って縮小したかのような寺田さんの作品は特異。展覧会を企画した同館学芸第一課担当課長の二木伸一郎さんは「海に浮かぶ遊覧船からのぞき眼鏡で海底をのぞき、クローズアップしているような不思議な感覚が味わえる」と称賛する。
寺田さんは「17世紀の絵は天井画からペンダントに描かれたものまで大きさはさまざまだった。今は自由に描けるので、100人いれば100人の世界がある」と話す。
開館時間は9時30分~18時。観覧料は、一般=350円、大学生=280円、高校生以下無料。3月24日まで。