金沢アートディレクターズクラブ(ADC)が主催する公開審査会が11月12日、金沢市民芸術村(大和町1)で開催され、アートディレクターの横山真紀さん(横山真紀デザイン室・小松市)がグランプリを獲得した。
金沢ADCは、石川県で活動するクリエーターが互いに刺激し合い、切磋琢磨(せっさたくま)する場を提供することを目的に今年7月に発足。ADCの活動の中心となるのが、アートディレクションの力を競う作品公開審査会。1回目となる今回は、金沢ADC会員、非会員合わせてクリエーター49人がエントリーし、ポスター、新聞広告、パッケージ、企業ロゴ、CMなど計241作品を出品した。
審査会では、第一線で活躍するアートディレクター佐藤卓さん、永井裕明さん、はせがわさとしさんの3人が審査員を務め、「KANAZAWA ADC賞」の10作品を選定。その中からグランプリ、準グランプリを選ぶ。
1次審査では、会場の床一面に応募作品が並べられ、審査員が一点一点を丁寧に確認し、入選レベルに達している作品を選び出した。続く2次審査では、入選作品の中から35作品のノミネート作品を選出した後、ADC賞受賞作10点を決定した。同点を獲得した作品のいずれを受賞作とするかについて、審査員同士で真剣な討議を交わす姿も見られるなど、予定時間を大幅にオーバーして熱のこもった審査が行われた。
最終の3次審査は、来場者が注視する中で審査員による持ち点投票が行われ、満票を獲得した横山さんがグランプリに輝いた。受賞作は、金沢の和紙工房のロゴ、ポスター、商品パッケージなどの一連の作品。金沢らしい伝統工芸のエッセンスと、モダンなデザイン性が評価された。
審査終了後の授賞式では、緊張した空気が一転、和やかに。審査員が金沢弁で受賞者をたたえ、会場の笑いを誘った。グランプリに輝いた横山さんは「主催者、参加者が一つになって、夢にまで見たADCを金沢で開催できたことが何よりうれしい」と涙ぐみ、受賞の喜びとともにADC開催の達成感を語った。
佐藤さんは「出品数は多くはないが、さまざまなメディアの作品がある」と総評し、「今後各メディアをつなぎ、社会の仕組みを変えることがアートディレクターの役割」と、集まった地元クリエーターを鼓舞した。
金沢ADCの理事で、同審査会委員長を務めた後藤徹さん(金沢美術工芸大学教授)は「ADCはクリエーターの運動会。勝ち負けを重視するのではなく、いいデザインを互いにたたえ合いたい」と話し、石川のクリエーティブ業界の底上げに期待を寄せる。
金沢ADC賞の受賞者、受賞作品は以下の通り。グランプリ=横山真紀さん「まるとも商品開発とアートディレクション」、準グランプリ=砂原久美子さん「kappa堂インセンス ポスター」/アマヤギドウジュンさん「妖怪温泉双六」/後藤徹さん「パイパー」、金沢ADC賞=松澤桂さん「北海道大物産展」、松澤桂さん「折り鶴プロジェクト」、横山真紀さん「NUSSHA『鉋(かんな)』商品開発」、一二明子さん「Style of relaxation fu」、宇野たまこさん「omotenashi no katachi<わ>かきくけこ」、山田隼人さん「漆工房大島ポスター」。