2014年打ち上げ予定・水星探査用磁界センサ、金沢大が開発

磁界センサを開発した八木谷教授(左)ら

磁界センサを開発した八木谷教授(左)ら

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 金沢大学理工研究域電波情報工学研究室(八木谷聡教授)は12月2日までに、2014年に打ち上げ予定のフランスの「アリアン5型ロケット」に搭載する水星探査用磁界センサを開発した。

打ち上げられるのと同型の地上試験用磁界センサー(手前)と増幅器

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 宇宙航空研究開発機構(JAXA)・宇宙科学研究本部と欧州宇宙機関(ESA)が共同で進める日欧国際共同プロジェクト「ベピ・コロンボ水星探査計画」の一環。センサは現在、国内の宇宙機器メーカーが製造しており、来年1月の完成を予定している。その後、国内外で試験を繰り返し、打ち上げに備える。

 JAXAによると、太陽に近いため、地上の望遠鏡で観測することが難しく、さらに、高熱と放射線などに阻まれて、探査機による観測が成功したのも現時点ではまだ1度だけという「未知の惑星」水星。同計画では、初めてこの水星の磁場と磁気圏、内部、表層を総合的・多角的に観測し、地球と比較する。

 ロケットには、水星磁気圏探査機と水星表面探査機が載せられる。同研究室が開発した磁界センサは磁気圏探査機内の「プラズマ波動・電場観測装置」の一部で、縦・横各1.5センチ、高さ10センチの棒状。3本あり、うち同研究室が担当した2本は、磁石の性質を持つ合金を入れたコイルをアルミニウムで覆ってある。0.1Hz~20kHzの低周波帯をカバー。残る1本は、フランスのプラズマ物理研究所が担当した。この3本を組み合わせ、水星の周りの磁界を観測し、電波の出方や種類、発生の仕組みを明らかにするという。

 水星周辺では、探査機の表面温度が最高で摂氏380度程度まで上がると推定されることから、センサも高熱に耐えられる構造にすることが求められた。同研究室では、周囲をアルミニウムと強い耐熱性を持つプラスチックで何重にも覆ったうえ、断熱材をかぶせて内部を摂氏200度以下に保持できるようにした。さらに、センサ内部についても、摂氏200度の環境で作動するように、試験を繰り返して耐熱性のある材料を選定した。センサからの信号を受ける増幅器は人工衛星内に置くこととし、電子回路の形を変更した。

 同研究室では2001年ごろから、JAXAの前身である宇宙科学研究所に対し、水星探査用ロケットに磁界アンテナを搭載するよう、提案していた。観測装置開発のメンバーには、公募で選ばれた。

 八木谷教授は「人工衛星を作るには時間がかかり、打ち上げ後、水星周辺に到達するまでにさらに6年がかかる。息の長い話だが、世界最先端のプロジェクトに携わる面白さがある。以前、電波受信機の設計に携わった火星探査衛星『のぞみ』では成果を出せなかったので、今回は何としてもデータを得たい」と意気込む。

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