人工衛星をアートに利用-金沢美大、地上絵制作へ実験

明成小学校グラウンドに設置されたパチンコ玉の「反射板」と、自作の衣装で撮影タイミングを待つ児童

明成小学校グラウンドに設置されたパチンコ玉の「反射板」と、自作の衣装で撮影タイミングを待つ児童

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 金沢美術工芸大学美術科の鈴木浩之准教授(油画専攻)が現在、衛星写真を利用して地上絵を制作する計画を立てている。

ボウルやお玉、アルミシートなどを使って作った衣装を身に着けた明成小1、2年生

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 11月25日には、金沢市の明成小学校(同市瓢箪町)など3つの小学校のグラウンドにパチンコ玉や手鏡で作った「反射板」を置き、上空約700キロメ-トルを通過するアメリカ航空宇宙局(NASA)の人工衛星から反射光を撮影する実験を行った。来年度には、同様の手法で地上絵「金沢の昼の星座」を描くという。

 この人工衛星は地球の周りを回り、世界各地の地形や高低を撮影して発信している地球観測衛星「Terra(テッラ)」。鈴木准教授は、この衛星を運用している資源・環境観測解析センター(東京都中央区)に依頼し、日ごろは地上から出る赤外線を計測しているセンサーを撮影用に利用した。

 実験は、2メートル四方の「反射板」の反射光が衛星写真にどのように写るかを確かめるのが目的。「反射板」の素材として、パチンコ玉、手鏡、ストーブの煙突の3種類を用意し、それぞれ明成小、西小、中央小が協力した。

 このうち明成小グラウンドには、パチンコ玉約4万個を正方形に並べた。1、2年の児童78人も料理用のボウルを頭にかぶったり、アルミシートで作ったエプロンを着けたりした「宇宙との交信用の衣装」(同校)で立ち、太陽光を反射させながら鈴木准教授とともに10時51分20秒の撮影タイミングを待った。

 金沢上空で撮影した衛星写真には、羽咋市南端から小松市の小松空港までの範囲が写るため、2メートル四方の「反射板」の反射光は、ごく小さな白い点として確認できる程度だという。

 写真を見ることができるのは約2週間後で、鈴木准教授がどの方法が最も描画手法に適しているか見比べる。来年度、制作予定の地上絵「金沢の昼の星座」は、さらに多くの小学校グラウンドに今回の実験で選んだ手法で「反射板」を作り、星座の形を再現して衛星から撮影するという。

 今回の実験は、今年度の文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業に採択されており、同大と同市教育委員会の連携事業として行われた。

 鈴木准教授は「太陽がよくあたり、上空にかかっていた雲も薄くなったので、良い結果が得られるのでは。子どもたちもあらかじめ人工衛星について勉強して楽しそうにしていた。『金沢の昼の星座』は市民全体で取り組む面白い試みになるのではないか」と意気込みをみせる。

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