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エリア特集2010-04-21

石川県内の建設業者
生き残りを懸けて新しい分野へ挑戦

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 「コンクリートから人へ」。公共事業削減を公約にした鳩山政権が誕生して7カ月。公共事業予算は、自民党政権時代よりも一層、厳しく絞り込まれ、一方、民間のビルやマンション建設も景気低迷の中、激減している。

 こうした状況に強い危機感を抱いているのが建設業者だ。県内では、生き残りをかけて、異分野に進出する企業が相次いでいる。

 水産加工や農業、製造業、高齢者福祉、環境など、業種はさまざまで、各社はノウハウを一から学びながら、収益の支柱に育てようと奮闘している。

家庭でいつでも食べられる刺し身を

土木の刀祢(とね)建設(輪島市町野町)は昨年4月、社内に水産部を発足させ、水産物加工・販売事業をスタートさせた。商品は、真空パック詰めの刺し身用サクと切り身、一夜干し。ブリ、アジ、サワラ、タイ、赤イカなど能登沖でとれた魚を、手を汚さず、気軽に調理できるのが売り。社長の刀祢利雄さんが「家庭で冷凍保存でき、いつでも食べられる刺し身を売りたい」との思いから考案したアイデア商品だ。


同社は年間施工高がピークだった1998年ごろの半分以下に落ち込み、今後も回復が望めないことから、複業化を検討してきた。刀祢さんが定置網の漁業法人も経営しているという強みを生かし、水産物の加工・販売を新業種に選んだが、当初の最大の課題は、どうやって製品を売るか。公共事業の受注を待つ土木業者にはセールスのノウハウがない。専門家に相談したり、金大の夜間ビジネススクールに通ったりして知識を養い、事業化にこぎ着けた。今、「セールスマン」として商品を売り歩くのは刀祢さんの仕事である。

■レストラン、アンテナ店開設へ 1億円事業目指す

不慣れながらも営業のかいあって、一夜干しは県漁協の計らいで金沢港いきいき魚市(金沢市無量寺町)やJAグリーン金沢(同市専光寺町)に並べることができた。切り身は、輪島市の学校給食用として納入している。近日中にはネット販売も始める予定で、初年度の売り上げは3,000万円に達しそうだ。さらに年内には、同社向かいにレストランを併設したアンテナショップを開く。 投資費用は約5,000万円に上る見込みだが、将来的に採算をとる自信がある。


刀祢さんは「いずれは売り上げを1億円ほどにしたい。本業を支えるところまでにはならないが、人がいない地域で建設業は成り立たない。雇用の場を作ることで、間接的に本業にも生きてくるだろう」と期待を込める。


金沢港いきいき魚市JAアグリライン石川

■栽培ジネンジョを差別化 建設機械使い畑作

 刀祢建設と同じ土木の明翫(みょうがん)組(金沢市泉野町6)が取り組むのは、ジネンジョとソバの一種「ダッタンソバ」、野菜の栽培。公共事業縮減に伴い、担当する現場がなくなった社員をどうするか。リストラをしたくない同社が選んだ道が農業進出だった。同市福畠町の土地85アールを借りて畑を作り、2年の試験栽培を経て、昨年1月に本格参入した。

 ジネンジョを選んだのは、天然物が高値で販売されていて高級イメージがあるため。支援してくれた金沢市の担当者が栽培方法を教えてくれたこともプラスになった。ダッタンソバも、機能性成分「ルチン」を多く含み、健康食品として注目されていることから、事業成功の夢を託した。

 畑作に携わるのは農業事業部長の加藤英孝さんだ。約30年間、土木一筋で働いてきて、農業の知識がまったくない加藤さんが、まず試みたのは産地の視察と専門書の通読。あとは、現場での試行錯誤の繰り返し。天然物に似た形状のジネンジョを収穫するため、定植前に掘削機械「トレンチャー」で畑を掘って土の柔らかさを均等にしたり、掘り取り作業の労力を省くためにバックホーを使ったりと、建設業ならではのアイデアも持ち込んだ。

 昨年度の出荷は、ジネンジョ2,000本、ダッタンソバ90キロ、サツマイモ300キロ、ジャガ芋300キロ、ナス120キロ。売り上げ見込みは250万円で、明翫組では「採算がとれるまで5年はかかるだろう」と長い目で見ている。

明翫組

■得意の土でインテリア小物製造

 現場で使い慣れた土を利用して、インテリア小物の製造に乗り出したのは、左官のイスルギ(金沢市神田1)。プランター、鍋敷き、キャンドル・ホルダー、コースター、せっけん皿。東京のデザイン会社の応援を得て、シンプルで、土の硬質な感触が新鮮なオリジナル製品を作り上げた。

材料として用いたけい藻土は、断熱性、吸湿性に優れ、熱い鍋の下敷きにしたり、コップからしたたる水滴を吸収したりするのに適している。廃棄後は土に還る「エコ素材」でもあり、女性客の評判は上々だ。ブランド名は、その名も、土、泥を意味する「soil(ソイル)」。社員3人が左官の技術を生かして手作りし、首都圏などの約100店舗で販売する。

 デザイン会社や県デザインセンターの後押しもあり、ブランド化や首都圏での販路開拓までは順調に進んだ。しかし、小物は1つ1,000円、2,000円台と単価が安いため、年間施工高が1998年ごろと比べ約10億円減った本業の支えとなるまでには、まだまだ程遠い。同社は商品数の増加と、県内での販路開拓を今後の課題に据えている。

■県が初期投資費用など助成

県土木部によると、石川県の公共事業予算は、ピークの1998年度に約2,670億円だったものが、その後次第に減り、昨年度は約1,000億円にとどまった。民間需要の落ち込みもあって、建設業者の倒産が続き、建設業許可業者数は昨年3月末現在約6,200社と、最も多かった2000年3月末の約7,200社から1,000社減った。


このため、県は昨年度から、新分野に進出する中小建設業者に初期投資費用を助成するなど、複業化を支援してきた。この助成は今年度も継続し、人件費も一部補助する予定だ。今月6日には、同部内など6カ所に相談窓口となる「建設業サポートデスク」を開設した。同部では、「余力のある企業でないと新しい取り組みをするのは難しいが、共倒れを防ぐために、こうした支援制度を利用してほしい」と話している。


石川県


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