「江戸村」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、栃木県日光市の「日光江戸村」だろう。しかし、金沢の奥座敷として知られる湯涌温泉にも、江戸時代の暮らしを今に伝える「江戸村」がある。金沢湯涌江戸村だ。
町屋・武家ゾーンから農家ゾーンへ(写真提供=渡邉希樂)
同施設は、江戸時代の加賀藩を中心とした民家を展示してきた「旧江戸村」を引き継ぐ形で、金沢市が2010(平成22)年9月に開設。公益財団法人「金沢文化振興財団」が運営している。現在、敷地内には18~19世紀に建てられた農家や武士住宅、商家、宿場問屋など、加賀藩領内に見られた代表的な建築物10棟が移築、復元されている。
1830年頃に建てられた旧山川家住宅(写真提供=渡邉希樂)
かやぶき屋根や土間、いろりなどが残る建物内部には、当時の生活道具や農具を展示し、来園者は靴を脱いで畳の部屋に上がり、梁(はり)の構造などを間近に観察できる。江戸時代の生活様式を五感で学べる点が大きな魅力になっている。
18世紀中頃に建てられた旧平家住宅(写真提供=渡邉希樂)
村長の中島照雄さんは、園内のお薦めスポットとして、「旧石倉家の本陣から望む石庭や、園内から見える山並みをぜひ見てほしい」と話す。
金沢周辺には、岐阜県の白川郷や富山県の五箇山、福井県の一乗谷朝倉氏遺跡など、伝統的建造物が残る観光地が点在する。その中でも湯涌江戸村は、金沢駅から車で約30分とアクセスの良さが際立つ。しかし、現在はその地の利を十分に生かしきれていない。公共交通機関での来園が不便なことなどから、年間来園者数は開園当初の約2万1000人に対し、2024年は約7700人と、およそ3分の1にまで落ち込んだ。近年はインバウンド客の増加により回復の兆しが見られるが、抜本的な改善には至っていない。
こうした状況を受け、金沢市は2024年、「金沢湯涌江戸村活性化検討委員会」を設置し、てこ入れに乗り出した。3回の会合を経て、2025年3月に、2033年度を最終年度とする9カ年の活性化プランを取りまとめた。同プランでは、教育旅行の誘致など集客力の強化や、周辺関連施設との連携強化、夜間開園によるライトアップなど16の施策を掲げている。
中島さんは「来年度には管理棟が完成する。これを機に、体験プログラムの充実や地元との連携強化も進めていく。『見る、遊ぶ、体験する』をコンセプトとした遊びコーナー、体験コーナーも充実させ、来園者の増加につなげたい」と意欲を示す。
金沢湯涌江戸村
https://www.kanazawa-museum.jp/edomura/
【地域の魅力探り隊 with 北陸大学】は北陸大学の協力の下で取材を行い制作した特集記事です。